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選択肢としての雇用延長をどう考えればいいか

定年後の人生を設計する(3)雇用延長すべきかどうか

楠木新
神戸松蔭女子学院大学教授
情報・テキスト
高齢者雇用安定法によって定年年齢が60歳から65歳に引き上げられ、希望する人は継続雇用制度を受けられるようになったのだが、賃金が下がるなど不満の声も聞こえてくる。定年に関する選択肢が増える中、雇用延長についてどう判断すればいいのか。また、定年後のキャリアについてどう考えていけばいいのか。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:53
収録日:2021/08/25
追加日:2021/10/12
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≪全文≫

●雇用延長の仕組みをきちんと理解した上で上手に利用する


―― (定年前に)どういう準備をするべきかという具体的な行動様式は、また改めてお聞きできればと思いますが、そうした準備をしなければならないことと同時に、50歳以降になってくると決断を迫られる局面にもなると思います。例えば60歳からの再雇用制度は、一つの選択肢だと思いますので、まずはこの再雇用雇用延長をすべきかどうか、それに乗るべきか乗らざるべきか、ということが挙げられます。先生はいろいろな事例をご覧になっている中で、例えばこういう人は乗ったほうがいい、こういう人は乗らないで他でチャレンジしてみたほうがいい、ということがあると思いますが、そこを決める際の、何かヒントはありますか。

楠木 雇用延長ですが、(希望者に関して)60歳から65歳まで雇用する義務を雇用主に与えました。これは、働く人間にとっては選択肢が増えたと考えればいいと思います。そのため、それに乗るか、乗らざるかというよりも、どちらを選択すれば、自分の生活を豊かにしていけるのか、充実した生活が送れるのかがポイントだと思います。

 雇用延長は60歳までの定年に接ぎ木をした形なので、今までの仕事をそのまま充実してやっていくのが難しいという場面が結構多いのではないか。また、そういう話をしている人も多いのではないかと思います。よって、その制度自体を取るかどうかよりも、先ほどの繰り返しですが、少し準備をしながら、制度をうまく使っていくという観点が大事ではないかと思います。

 つまり、雇用延長を選択して今までより時間的な余裕ができたので、50代からしたかったことをやってみるとか、定年後の準備としてそれに取り組む、ということです。そう考えれば、雇用延長も有効に生かせる部分があると思います。

 しかも雇用延長の場合は、過去(それまで)に働いた部分の延長として働くので、そんなに精神的にも悩まないでしょうし、慣れた仕事なので負荷も多くないでしょう。そして、それは(生活の)一部としてやりながら、次の65歳以降の準備に備える。そういう働き方や準備を並行して進めることを選択すれば、雇用延長をうまく使えると思います。ですから、雇用延長に何か多くのものを求めて、それを選択するのが良いか悪いかという議論自体はやや違うと思います。むしろ働き手側の姿勢の問題が問われていると私自身は思っています。

―― 雇用延長された人の不満、悩みとして、思いきり給料が下がったとか、そのことを想像していなかったという話や、権限も何もなくなって、今まで部下だった人から仕事を受ける形になり、自分の今までの仕事は何だったのかと自尊心を傷つけられたという話も聞いています。

 しかし、そこはそういう捉え方ではなく、まさに準備期間を自分でどう設定するかが大事で、自分の準備度合いによって、そこを生かすかどうかが決まるということでしょうか。

楠木 そうです。先ほども言いましたが、時間的な余裕ができるので、次にやるべきことを、ある程度持っている人は制度を非常に有効にうまく使っていると思います。

 先ほど川上さんが言われた、給料が下がる、あるいは自分のやりたい仕事ができないというのは、会社の枠組みがそのまま残っていった前提での話だと思います。しかし、この65歳までの雇用延長は、あくまで今までの60歳を65歳まで直接延長する制度ではありません。そう言いたい気持ちは分かりますが、制度の趣旨をきちんとわきまえていれば、そもそも60歳までの正社員としての契約期間を終え(一旦)離れた立場にいることになるので、そのことを声高に言うのは少し違うという感じがしないでもないですね。

―― そうすると、本当に何歳から準備を始めたかによって、まさに雇用延長すべきかどうかも変わってくるし、その先の身の振り方もずいぶん変わってくることになりますね。

楠木 そうです。先ほど言われた、雇用延長を選択するかどうかで、迷えるぐらい準備をしておいたほうがいいということです。

 準備をしていない人の大半が「ああ、他にやることがないので、定年延長をしておこう」という判断をされるのですが、私の取材でもほとんどそうです。むしろそれまでに準備をして、雇用延長を選択したほうがいいかどうかを見極める状態にしておくのが、一つのポイントではないかと私自身は思っています。


●会社員と個人事業主では、社会とのつながり方が異なる


―― これはどういう道に進みたいかにもよってくるとは思うのですが、よく脱サラして起業したり、フランチャイズの仕事や蕎麦屋さんをやったりなど、いろいろな独立系の仕事があると思います。これも、もしかすると向き・不向きがあるのではと思いますが、独立したことで本来あるべき老後の大切な備えを使い果たしてしまったというケ...
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