●雇用延長の仕組みをきちんと理解した上で上手に利用する
―― (定年前に)どういう準備をするべきかという具体的な行動様式は、また改めてお聞きできればと思いますが、そうした準備をしなければならないことと同時に、50歳以降になってくると決断を迫られる局面にもなると思います。例えば60歳からの再雇用制度は、一つの選択肢だと思いますので、まずはこの再雇用、雇用延長をすべきかどうか、それに乗るべきか乗らざるべきか、ということが挙げられます。先生はいろいろな事例をご覧になっている中で、例えばこういう人は乗ったほうがいい、こういう人は乗らないで他でチャレンジしてみたほうがいい、ということがあると思いますが、そこを決める際の、何かヒントはありますか。
楠木 雇用延長ですが、(希望者に関して)60歳から65歳まで雇用する義務を雇用主に与えました。これは、働く人間にとっては選択肢が増えたと考えればいいと思います。そのため、それに乗るか、乗らざるかというよりも、どちらを選択すれば、自分の生活を豊かにしていけるのか、充実した生活が送れるのかがポイントだと思います。
雇用延長は60歳までの定年に接ぎ木をした形なので、今までの仕事をそのまま充実してやっていくのが難しいという場面が結構多いのではないか。また、そういう話をしている人も多いのではないかと思います。よって、その制度自体を取るかどうかよりも、先ほどの繰り返しですが、少し準備をしながら、制度をうまく使っていくという観点が大事ではないかと思います。
つまり、雇用延長を選択して今までより時間的な余裕ができたので、50代からしたかったことをやってみるとか、定年後の準備としてそれに取り組む、ということです。そう考えれば、雇用延長も有効に生かせる部分があると思います。
しかも雇用延長の場合は、過去(それまで)に働いた部分の延長として働くので、そんなに精神的にも悩まないでしょうし、慣れた仕事なので負荷も多くないでしょう。そして、それは(生活の)一部としてやりながら、次の65歳以降の準備に備える。そういう働き方や準備を並行して進めることを選択すれば、雇用延長をうまく使えると思います。ですから、雇用延長に何か多くのものを求めて、それを選択するのが良いか悪いかという議論自体はやや違うと思います。むしろ働き手側の姿勢の問題が問われていると私自身は思...