『ベラスケスのキリスト』を読み解く
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「死に死を与える」…死を乗り越える価値観
『ベラスケスのキリスト』を読み解く(12)キーワードを読み解く〈下〉
執行草舟(実業家/著述家/歌人)
『ベラスケスのキリスト』第4部第1節に「死に死を与える」という言葉が出てくる。これは「肉体のある人生が人生」と思っている限り、理解できない。戦後の日本人は貧しかったが、写真を見るとみんな明るい。当時の日本人は「人生なんて、どうにかなる」「死ぬときが来たら死ねばいい」と達観していたからである。今より少しは永遠の命とつながっていたのであろう。つまり死を受け入れているから、死を忘れることができる。執行草舟はこれを『葉隠』で理解した。『葉隠』は、じつは神秘思想の書でもある。(全13話中第12話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12分11秒
収録日:2022年8月2日
追加日:2022年11月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●「権利」も「人生」も「地上の命」も、宗教家や武士は語っていない


―― 次に「死」についてお願いします。「死に死を与える」という言葉がありますね。

執行 第4部の第1節ですね。「死」という詩の中に「死に死を与える」という、ちょっと意味不明なことが書いてあります。これがどういうことか。

―― これは、すごく難しいですね。

執行 そうですね。大前提としては、肉体に囚われているわれわれが、自分の人生を「肉体のある人生が人生」と思っている限り、絶対にわからない言葉です。キリストが言うような「永遠の生命」が、実は人間の本当の命であるとわかると、わかるのです。

 だから死というものは、人間にはない。われわれが死が本当にあると思っている限り、地上の子供なのです。臍(へそ)の緒を断ち切ってないのです。地上にいて、地上の物質は全部腐り果てていくから、われわれは地上の物質として腐らなければならない存在だというのが、われわれの死の観念です。そこを超越しなければならないということです。

 これには1つの例があります。信仰を失っていったルネッサンスの頃のジョン・ダンという英国の詩人の詩です。私はダンが好きで、彼が信仰生活で一番重要なことを詩にうたっています。やはり同じような言葉があり、「死よ、お前は死ぬのだ」というのです。

―― 似てますね。

執行 同じ境地にみんな到達しているのです。死を死として気にしているうちは、霊性文明は一切わからない。だから霊性文明に入ったときは、人間は死を忘れなければだめなのです。

 死を忘れた生き方というと、武士道では死に向かっていきます。死の哲学です。でも山本常朝も言っていますが、実は死の訓練を毎日するのは、死を忘れることでもあるのです。「武士道とは死ぬことと見つけたり」と言いますが、最初から「死が人生だ」と思っていれば、逆説的ですが、私も武士道で生きてきたため「死がない」のです。

―― なるほど、最初から。

執行 死に向かって生きていると思っていれば、死はない。死に向かっているうちに、人間の死などを乗り越えた価値観が身についてくるのです。それが『葉隠』のいいところです。それと同じことを言っているのです。

 西洋では人間生命の真の価値について、(マルティン・)ハイデッガーという哲学者が言っています。「生命とは、死すべき存在である。死に向か...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(38)アメリカ中間選挙と民主主義
【10min解説】第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(4)アレクサンドル・ネフスキーの英雄化
ロシアの英雄「アレクサンドル・ネフスキー」はなぜ英雄か…ドイツ騎士団と戦った歴史がどう利用されたか
上月豊久
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
「発想力」の技法を学ぶ(1)発見と探究(前編)
“なぜ”を繰り返せ!『発想力の全技法』に学ぶ原因探究法
三谷宏治