テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

地産地消で再建、コープさっぽろのカーボンニュートラル

武器としての「カーボンニュートラル経営」(3)コープさっぽろの地産地消

夫馬賢治
株式会社ニューラルCEO
情報・テキスト
カーボンニュートラルを実現するためには全ての企業、すなわち生産から小売まであらゆるプレイヤーが例外ではない。その中で今回取り上げるのは、経営危機から見事に再建を果たした「コープさっぽろ」だ。「日本の食糧庫」といわれる北海道で地域的な食品経済を循環させることに価値を見いだして成功したのだが、それはどういったものなのか。地産地消でカーボンニュートラルを進めるその取り組みを解説する。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●地域的な食品経済の循環に価値を見いだして再建に成功


―― 続きましての事例が生活協同組合の「コープさっぽろ」さんです。

夫馬 そうですね。

―― (コープは)日本全国にございますので、皆さんもイメージがつくと思いますが、コープさっぽろさんが、他の地区の生協さんと比べて特徴的なのはどういうところですか。

夫馬 コープさっぽろさんは名前の通り札幌に本部がありますが、広い北海道全域に店舗があり、今は札幌というより北海道全土を代表するコープさんになっています。実はコープさっぽろさんは、以前かなりの経営難に陥ってしまいまして、事実上経営が一度行き詰まり、再建をされたという企業になります。

 コープさんは地域によっていろいろなカラーがあったりしますが、コープさっぽろさんは、経営難から再建するタイミングで、生まれ変わろうということで食品、食材に特化したコープとして始められました。それが今も続いているのが、コープさっぽろさんの状況です。

 北海道は、皆さんも少しイメージがあると思うのですが、「日本の食料庫」といってもいいぐらい豊富な食材があります。魚介類や芋、さらには野菜もたくさん作っていますし、最近では「北海道のお米がおいしい」ということが話題になっているぐらい、日本を支えている食料庫になっています。北海道が食料庫であるならば、この地域の食品を北海道の皆さんに届けていこうということで、地域的な食品経済を循環させるということに価値を見いだされました。そうして大きく再建に成功してきたというのが、コープさっぽろさんのコープとしての特徴です。


●棚の商品全てをカーボンニュートラルにするところまでがゴール


―― コープさっぽろさんは当然、流通業、小売業になるわけですね。自分で製造しているわけではないという世界観の中で、コープの場合は、いわゆるプライベートブランドということで、企業と組んで作るということもあるとは思うのですが、その商品力を高めるのに、カーボンニュートラルはどういう発想でうまくいくものなのですか。

夫馬 まず都市部にいる方は、コープさんには宅配のイメージがあるかもしれないですよね。

―― 共同購入ですね。

夫馬 そうです。店舗があるというよりは、契約して宅配で届けてもらうというのを想像しますけれど、コープさっぽろさんはスーパーの店舗がたくさんあり、地域を代表するスーパーなのです。なので、珍しいコープさんにあえて選んで行くというよりも、普通に一番近い場所がコープだったりするので、皆さん、コープさんに行きますし、いろいろな小売店がある中でもあえてコープさんに行くというような方々が、実は北海道には多いのです。

 会員さんがものすごくたくさんいるのでネットワークも豊富で、それぞれアクセスする情報を持っている。なので、(誰かに)何か送りたいなと思ったら回報紙が届き、すぐ情報が取れるというのが北海道のコープさんの立ち位置なのです。

 今、カーボンニュートラルにおいても、小売業は非常に重要な業種になっています。どうしてか。小売業はそもそも小売業として、自分たちの店舗を運営するときにはたくさんの電気を使います。照明だけでなく、冷蔵設備、冷凍設備もあります。北海道ですから、冬には暖房設備も必要になってくるということで、店舗では大量の電気を使うという状況があります。

 もう一つ、サプライチェーンで考えると、今、企業が自分たちだけではなく、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルをやるとすると、例えば、野菜を作る、コメを作る、牛肉を作る、魚を捕るという生産行為によってたくさんの温室効果ガスが発生しますので、小売業のお店の棚には大量にCO2を生み出した製品が並んでいるということになります。なので、小売業にとっては、自分たちだけではなく、この棚に置いてある商品全てをカーボンニュートラルにするところまでがゴールになっているのです。

 これに今、向かってきているコープさっぽろさんは、日本の中でも有数の小売業といえるのではないかと思います。

―― そのうえ、非常に力も強いわけですし、その特徴を出すためにもいいということになるのですか。

夫馬 そうですね。まずコープさっぽろさんとしては、もちろん自分たちの食材をカーボンニュートラルしていこうということですが、先ほどお伝えしたように、北海道そのものが(日本の)食料庫です。なので、北海道だけではなく、日本の全国、場合によっては海外にもこれから農業品を輸出したいという思いもあります。日本でも農作物の輸出が政府全体の一つの政策になっていますが、その中心地の一つが北海道なのです。

 コープさっぽろさんがこうして、農家も含めたサプライヤーを応援していけばい...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。