●中台の政治的節目が重なる2024年~27年が危険な時期
―― 本日は小原雅博先生をお招きいたしまして、「2024年危機~米中関係の行方」というテーマで先生のお話をいただきたいと思っております。小原先生、どうぞよろしくお願いいたします。
小原 よろしくお願いします。
―― 今後、特に中長期的に見た場合に、どのような危機が起きてきて、どのような課題があるのかを見てまいりたいと思います。
まずは台湾危機、台湾統一問題についてです。
小原 これがなぜ2024年と関係するかというところを、まずご説明する必要があるかと思います。スライドの下のところを見ていただきたいのですけれども、アメリカの軍の高官などがこれまでも議会の公聴会などで表明してきたことです。中国の学者も口にしています。
まず1つ、大きな節目として、2049年の建国100年があるわけです。このときに、まさに習近平国家主席のスローガンである「中華民族の偉大な復興」を実現しないといけません。そのためには、やはり台湾の統一は欠かせないわけです。彼らからすれば台湾の人たちも中華民族ですから、台湾が統一されない限りは「中華民族の偉大な復興」はないと。要するに中国共産党からすれば、そうした中華民族の偉大な復興を成し遂げるためには、台湾の統一は欠かせないピースなわけです。
これを実現することを見据え、かなり先ですが、2049年というお尻が切られているわけです。
さらに習近平氏が異例の3期目に進み出したということは、やはりそこで正統性が問われるわけです。それをどこまで口に出すかは別にして、「何で3期目もするの?」という疑問は中国国内にもたくさんあると思うのです。そうすると、習近平氏自身もそこできちっとしたそれなりの成果はあげないといけません。それは何かといえば、やはり1つは台湾統一に向けて、それなりの実績づくりをしていくということでなければいけないと思うのです。
その意味で、第3期の2022年から2027年は非常に大事な期間になってくるわけです。これが、いろいろな方が2027年を重要だと言及する理由の1つです。
もっと見ていくと、実は2027年は、人民解放軍建軍の100周年という大事な節目なのです。「武力統一」は人民解放軍なしにはできないわけです。人民解放軍は、最終的に全て、つまり香港を統一、返還を1997年にやりましたし、さらに台湾も統一するということで、そこで大きな貢献をすると。これを建軍100周年で行うということを目指して、人民解放軍として汗を流すのは当然だという話になってくるわけです。
―― 中国では、ということですね。
小原 そうすると、その前にもう1つ2024年という年があります。この年は、次の台湾の総統選挙があるのです。今、蔡英文氏が総統をやっていますが、もうすぐ2期が終わります。台湾(総統)は2期しかできないので、そうすると彼女の後継者になるような方が出てきます。その人が国民党の候補者と戦うことになるわけです。そのときにまた、国民党が敗れて、民進党から総統が選ばれるということになると、習近平氏からすれば、これはもう平和統一の可能性が本当になくなってきたということになります。
民進党はある意味で「台独」、つまり独立志向を持っていますから、党内でもそれを強硬に主張する人たちもいます。そうなってくると、なかなか平和統一の話し合いができません。民進党は「一国二制度」もNOだと言っているわけです。「一国二制度」というのは、まさに平和統一のために中国共産党が提示しているフォーミュラ(定式)ですから、これを否定するということになると、具体的にどうやって(平和統一を)やるのだということになってくるわけです。
そうすると、2024年の結果次第では、もう武力を使わざるを得ないということになります。この武力を使う条件として挙げている1つが、平和統一の可能性がなくなったと見られるようなときであるということを言っているわけです。そうなってくると、2024年から2027年が、2024年の総統選挙の結果によっては非常に危険なゾーンになってきます。
ちょうどそのぐらいの時期を目指して、今の台湾海峡のパワーバランスはどんどん中国に有利になってきているわけです。さらに中国側の軍事力の強化、要するに台湾を軍事的に統一するような力というものを、訓練も含めて高めていくという意味でいえば、やはり2024年から2027年は危険な時期に当たるのではないかということを専門家も言います。
この点が、この2022年の内政の季節を超えて先を見たときの、1つの非常に重要な問題だと思います。
●ペロシ下院議長の訪台で新たな局面を迎えた米中の軍事的緊張
小原 この間(2022年8月2日)...