岸信介と日本の戦前・戦後
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「統制経済」で重宝され…喧嘩っ早い岸の官僚時代の武勇伝
岸信介と日本の戦前・戦後(2)統制経済を研究した官僚時代
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
官僚を目指す東京帝大卒業生の多くが内務省を選ぶ中、岸信介が進んだのは農商務省だった。将来的な日本の変革を見据えてのことだが、その先見性は当たり、世界の潮流と合致していく。そこで岸が向き合ったのは「統制経済」である。その研究のためヨーロッパを視察し、やがてその担い手として大きく頭角を表す岸の官僚時代を振り返る。(全7話中第2話)
時間:10分14秒
収録日:2022年9月2日
追加日:2023年2月25日
≪全文≫

●日本の将来を見据え農商務省を選択、統制経済を学んだ


 岸信介が東京帝国大学(東京帝大)を卒業して、農商務省という官庁に入ったのは1920年のことでした。岸は大学時代の成績が非常に良かったこともあって、上杉慎吉教授から東大に残ることを勧められたのです。

 しかしながら、自分は学者には向かないのだというので、官僚の道を選びました。当時、成績が優秀な学生が官僚になる場合は、どの官庁に入るかというと、多くは内務省という官庁に行ったのです。当時、日本国内で一番影響力があった官庁です。

 同じ山口県出身の先輩に言ったら、やはり「内務省に入れ」ということを勧められたのですが、岸が面白かったのは、ここであえて農商務省という役所を選んだことです。当時、おそらく高等文官試験に通った中で決してトップクラスの人が競って行くような役所ではなかったと思います。

 この農商務省というのは、2つの省(農林省と商工省)に分かれていくことになります。岸は商工省のほうへ進むのですけれども、どうして農商務省に入ったかというと、第1次世界大戦後の新たな社会において、岸自身「産業を発展させていくことが日本の将来にとって重要なのだと考えたからだ」と言っています。つまるところは、わりと周りの流れでいいところに行くというのではなくて、これからの日本の将来のようなものを見据えながら農商務省という役所を積極的に選択したということが分かるのです。

 商工省の中で、当時、工務局という工業を中心にする部局が非常に力を持ち始めていて、結果として岸の見通しは非常に当たったわけです。岸はこの役所に入った後でどういう分野で専門性を確立していったのかというと、1つは「統制経済」というものでした。

 つまりは自由放任で経済を任せていくというのではなくて、ある程度政府が経済をコントロールしていく必要があるのだということで、そういったものが先進的に行われていたヨーロッパで視察をして、勉強をしてくるということを若き日の岸は行います。

 具体的に岸が留学視察に行ったのはドイツです。第1次世界大戦が終わった後のドイツはワイマール体制の下だったのですけれども、このワイマール体制の下でやられていた、いろいろな経済施策のようなものを勉強するために視察に行っています。


●負けん気の強い岸の政治家としての資質


 ただ、岸が官僚として...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(2)ハードで動くCopilot
Microsoft Copilotの革新性…想像がつかない世界に
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治