●仕事でのAI活用にポジティブ?ネガティブ?
―― いま、(生成AIが)どういう位置にあるのか。それこそ、これまで発明されたいろいろな技術と並べても、どんな意味があることなのかということをお話しいただきましたが、いよいよ、このようなことを受けて、「個々人の働き方がどう変わっていくのか」というところです。今までお話を聞いた中でも相当に変わるのだろうというのが容易に想像できるわけですが、この点について改めてお聞きするとどういうことになりますか。
渡辺 はい、わかりました。今後の働き方ということで、もう少しテーマを絞ってお話をさせていただこうと思うのですが、まずは少しサーベイを行いましたので、その内容をお話しします。
これは2023年のワークトレンドインデックスということで、母数が世界で3万名くらいです。そんなに大きくはないですけれど、少なくもないくらいのサーベイです。
AIに関して従業員(組織のメンバー)はどういうふうに感じているかということなのですが、49%ですから、概ね半数くらいの人がマイナスの意味でAIを捉えて、仕事を奪われるのは不安だと感じています。
その一方で、ポジティブにそこを捉えている方もいらっしゃって、「できるだけ多くの仕事をAIに任せて、自分の仕事量を減らしたい」と。おそらくは面倒くさい仕事、辛い仕事のようなものはAIに任せて、楽しかったり、クリエイティブだったりする仕事を自分はやりたいのだというふうに捉えておられるのではないかというふうに思います。まあまあポジティブな方が多いというのが1つのポイントなのではないかと思います。
―― これは「世界」でのデータですから、おそらく「日本人」になると「仕事量を減らしたい」というポジティブな方がもっと増えるのでしょうね。
渡辺 そうですね。そういう意味では、これまでデジタルの活用ということに関していろいろな問題提起がされてきていたりだとか、日本が非常に遅れているというような話は多いので、そういう意味で「AIが果たす役割というのは大きい」というふうに捉えておられる方が日本は非常に多いかと思います。
―― はい。
●データが示すAI活用による生産性の倍増
渡辺 もう1つデータをお示ししたいのですけれど、こちらはGitHub Copilotというものです。Codexというソースコードを自動生成する、開発者向けのCopilotです 。プログラミングを自動的にやってくれるシステムを使っている人の反応なのですけれども、実際どれくらいのコードがAIによって生成されたのでしょうか。46%ですから、半分近くはもうAIがやっているということです。これは、実際にもうすでに使っている人たちです。
そして、「より高い満足度の仕事に集中できている開発者の割合」です。ユーザーのうちの4人に3人は面倒臭い、手のかかる、やりたくないタイプの仕事というのはもう(あまり)やっていません。もっと自分を精神的に刺激してくれるような仕事ということになるのかと思いますけれども、そちらのほうにフォーカスできているということです。
そしてほぼ全員である96%の方は、より早くタスクを完了できるようになりましたと言ってくれています。
われわれは、このGitHub Copilotを使うことによる生産性アップについて、大まかに言って、だいたい倍増(100%増)するというふうに考えているので、それを裏付けるデータにもなっていると感じております。それくらいのインパクトを皆さんの仕事の中につくり出していくことができるというのが、AIの持っている力ということになるかと思います。
では、文章を作ったり、ソースコードを書いたりというだけなのかというと、そうではなく、AIをタスクレベルでいろいろなことに活用していくということはもちろんできるようになっていますし、このメニューというのは今後ますます増えていくのだと思います。その増やしていくところの創意工夫というのは、人間がやるべき領域かと思うので、まさにAIと一緒に仕事のあり方というのを変えていくということです。
大きなカテゴライゼーションで言うと、既存の情報を検索したりして情報を抽出することだとか、これを何らかの新しい文章の形に落とし込むことでしょうか。それから思考の壁打ちです。アイデアをつくる。先ほどご質問をいただいた点です。そういうことであったり、あるいは文脈を理解して、それを評価するような形です。インサイトを抽出する、あるいは添削、評価。点数を付ける。そういったようなことです。それから資料の右下は、これもここまでのお話の中でいろいろお見せしましたように、画像を作ったり、コードを作ったり。となってくると、文字でもいろいろなものを作り出すことができると思うので、たとえば学校の先生がテスト問題を作るのにまあまあ手がかかるといっ...