●AI活用に伴う電力の大量消費問題をどうするか
第6話の最後のほうで、問題点として質問させていただきましたけれども、実際にAIに仕事を任せるときの落とし穴について、渡辺さんはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
渡辺 そうですね。メディアですとか、世間一般でも、いろいろとAIに関しての不安や懸念も言われています。実はOpenAIのサム・アルトマンもそういうことを言っていたり、GoogleやMetaなど、そういったこれまでAIについていろいろな仕事、成果を出してきているAIの研究者の人たちも警鐘を鳴らすようなメッセージを出しているので、そこは避けて通れないというか、われわれも真剣に向き合いながらAIの活用を考えていくべきなのではないかというふうに考えています。
まずお見せするのはこちらなのですけれど、これが何だかおわかりになりますか。
―― これは白い建物としかわからないですね(笑)。
渡辺 おっしゃる通りですね。白い建物なのですが、これは実はデータセンターなのです。
―― データセンター。はい。
渡辺 マイクロソフトが、これはもちろん当社の提供しているデータセンターなのですけれど、車も一緒に写っていますので、車の大きさから考えるとかなり大きな白い箱です。こういうものがたくさん並んでいて、隣に更地もあるのをご覧いただけるかと思うのですけれど、こういうものをどんどん増やしているのが今の状態です。
マイクロソフトはデータセンターを世界200カ所以上に提供していて、そのネットワークをどんどん増やしている最中なのです。
すごくいいではないですか。しかし、これには困った面もありまして、先ほどのLarge Language Modelは、たとえばGTP3.5で言うと、3500億個くらいのパラメータを処理するのですけど、3500億というとどれくらいの数か、いまいちイメージが湧きにくくなってきます。そういうことをやるがために膨大なプロセッサを必要とするのです。要は、コンピュータを使うということなのですけれども、コンピュータを使うことで熱が出るというのと、電力を大量に消費をするのです。
なので、AIをどんどん人間が使っていくということは、サステナビリティの面に関してまあまあのマイナスになるというのが不都合な話というか、落とし穴の部分になってくるのではないかと思っています。
こちらは、日本政府も国会で話される答弁案を作るのに生成AIを使うという話です。これに伴って、日本国内にあるデータセンターでも、このOpenAIの技術が提供されるということになっているのですけれど、そうなってくると、日本国内のデータセンターでもAIが稼働して熱を生み出して、電気をいっぱい使うという不都合なことが起こってきてしまうというのが、1つのマイナス面になります。
それに対してマイクロソフトはどういうことを行っているのかということになるのですが、まさにこれはサステナビリティのテーマになりますけれども、2025年ですので、もう再来年になってしまいました。100%再生エネルギーでもって、もう世界で200カ所以上持っているデータセンターを運用するということを標榜しています。
もう1つは2030年ですので、これもそんなに遠くない将来になってしまったのですけれど、これまでにマイクロソフトが生み出した炭酸ガスをすべて回収して、カーボンネガティブを実現するというコミットメントを置いているのです。
逆に言うと、そういうことをやらなければ人間社会にとってどんどんマイナスになってしまうというのが、AI利用に関する落とし穴、不都合な現実ということになるのではないかというのが1つ目のポイントになります。
●AI活用で懸念されるフェイクやセキュリティのリスク
それからもう1つ、世間でいろいろと語られることが多いかと思いますけれども、AIが生成する、あるいはいろいろな活動を行うことに関してマイナス面はいくつもあります。
1つにはそこで処理される情報や生成される情報に関する著作権や倫理です。人間にとって害悪の及ぶような情報、あるいは画像を生み出してしまう可能性があるということです。
これはいくつもあると思うのですけれども、たとえば爆発物の作り方であるとか、そういうことはよく出ます。あるいはポルノであるとか、ディープフェイクという言葉も出ますけれども、そういうものです。それが生み出されたり、本来インプットとして使うべきではないものをインプットにしてしまうようなケースをどうやって防止していくのかを考えないといけません。
それから個人情報やセキュリティリスクです。これは、日本ももちろんそういう個人情報の保護ということを国として制度化して行っていますし、GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)という言葉をよくお聞きにな...