欧米の企業と日本の企業の違いは、欧米が数値目標を求めるのに対し、日本はお客さんに喜んでもらうことに主眼を置く。これは野中郁次郎の言うところによれば、日本は「暗黙知」であり、一方、欧米の理論は「形式知」である。「暗黙知」は「次善の策でいい」「適当にうまくやる」という部分もある。しかし、昨今の日本は「最善のもの」を求めるがあまり、「最悪」になっている。一方、「暗黙知」は、理想や理念に向かわないと既得権のようになりかねない面もある。(全12話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫
●「勇気と愛と大義」が日本の伝統的な精神
田村 だから、よく考えると、勇気と愛、それと大義。これが日本の伝統的な精神だと思います。
執行 だから商売の根本です。
田村 それをもう一度、作り直していく。これしかありません。
執行 これらとアメリカンビジネスは、あまりに違います。オーバーアナリシスなどの問題を生み出しているのは、全部アメリカンビジネスです。だから、この違いをわからないと、どこまで話しても意味がわからない。商売はもともと愛なのです。蕎麦屋にしても全部そうです。商売を立てた人で愛がない人はいません。「近所の人においしい蕎麦を食べてもらいたい」とか、そういう気持ちです。
田村 そうですね。
執行 ただ、それは循環経済で、限度がある。アメリカンビジネスは、数字と商売を分けて混同させているので、ごまかしがある。
だから、英米の人がビジネスを引退してから慈善事業をやるのは、みんな罪滅ぼしです。英米の金儲けのやり方は、他人を蹴落としてダメにすることです。だから、定年になったり(辞めたり)すると、今度は罪滅ぼしとして寄附や慈善事業など、いろいろやるでしょう。ああいう習慣はヨーロッパにも日本にもありません。商売そのものが……。
田村 お客さんのため。
執行 そういうことです。周りの人のために仕事をする。三井越後屋にしても、本当にいい着物を求める人のためにやっている。社会還元は、金儲けをしながら一緒にやる。これが商売の原理なのです。
田村 だから長続きするということですね。
執行 そうです。今の人はみんな忘れていますが、江戸時代に続いた老舗の店は、300年間みんな(そう)やっているのです。今の大企業は、できてから(長くても)まだ百数十年ほどで、(そうでない企業は)ほとんどが潰れているでしょう。システムが全然違うのです。
田村 そうですね。
執行 アメリカンビジネスの根本は、先ほど言ったように心と物質の混同です。心でしかありえない無限成長を物質にまで取り入れ、ごまかしている。キリスト教が生み出した、ごまかしです。どうしていつもこうした根本に戻るかというと、それをわかって考えないと次を考えられないからです。
田村 そうですね。
執行 ヒューマニズムもそうです。移民問題をはじめ、ヒューマニズムでヨーロッパは潰れます。ヒューマニズムはもちろん素...