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数字を追いかけるな、説明責任を求めるな…共感経営への道

日本企業の病巣を斬る(9)社会的共感経営の実現

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
野中郁次郎氏の唱える「知識創造企業」を築くには、「暗黙知」の活用と、地域やお客さんとの「共感」が重要である。まさに「共感経営」が重要だが、そのためには、数字を追いかけたり、説明責任を求めたりするのが間違いだとわからなければいけない。戦前の岩波書店が出版社として成功したのは、「社会的共感経営」を行ったからである。それゆえ、戦前の知識人の共感者を増やすことができた。そうした企業が1社でも2社でも出てくれば、必ず周囲も変わってくる。(全12話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:23
収録日:2023/10/18
追加日:2024/01/26
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≪全文≫

●「大事なこと」には言葉にできないものが多い


執行 野中郁次郎さんが言う「知識創造企業」を築くには、「暗黙知」を活用することと、「共感」、(つまり)地域や人々、お客さんと共感する経営を築き上げることが重要です。そのためには日本の場合、グローバル経済、アメリカンビジネスから抜け出さなければならない。抜け出さない限り、数字を追いかける無限経済成長からは誰も出られません。

 数字の追求は政治家もやっていることで、そうしないと選挙に受かりません。だから、今それをなくすのは大変ですが、やるしかない。

田村 そうですね。

執行 「数字を追いかけるのが間違い」なのです。間違いであるということを、本当にわからなければダメです。それには歴史を勉強しなければダメです。歴史を勉強すれば、ヨーロッパの企業も日本の企業も、18世紀ぐらいまで数字を追いかけていない。自動的に「共感経営」になっているのです。

 共感経営をしようと思うと、暗黙知が働いてきます。田村さんはキリンの高知支店で、たぶん暗黙知が知らず知らずに出たのでしょう。そのことをいつも言っているのです。ところが、アメリカンビジネスを信じると出なくなってしまう。だって「いけないこと」だと思うから。

田村 数値化しないとダメだと(思ってしまう)。

執行 私が若い頃はハーバード大学のビジネススクールがすごく有名で、同じ世代の頭がよかった人の多くがそこに入学してMBA(経営学修士)になりました。でも、そういう人たちが継いだ会社やブレーンになった会社で潰れなかった会社はありません。数値を追いかけるだけだと、オーバーアナリシスになってしまうのです。

田村 私が会社を辞めたのは10年少し前ですが、その直前ぐらいから取締役会で発言したことが全部記録に残るようになりました。そして、合意を取らないと進められないということになったのです。

 そうすると、大事なことには言葉にできないものが非常に多いけれども、それは説明ができないのです。説明責任が全部問われるようになったから。すると、説明できるものは、誰でも納得できるものなのです。

執行 薄っぺらいもの…。

田村 それでうまくできなくなった。クリエイティブなものが生み出されなくなった。これは、株主総会で説明責任が問われるようになったからです。

執行 だから、今の日本は、芸能界も含めて...
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