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理念と使命感と塩梅…組織や数字の奴隷にならない生き方

日本企業の病巣を斬る(6)組織の奴隷にならないために

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
企業の「勝ち負け」は、相手を蹴落とすこととは違う。それは「いかに顧客の心をつかむか」の競争であり、「顧客の心をつかむ」のは「勝ち負け」とは関係ない。顧客の心をつかむことで得られるのは満足や愛である。理念の実現に向かっていくと敵味方という考えはなくなる。一方、企業内ではよく「数字を達成しなければいけない」といわれるが、その数字自体が間違っている可能性もある。それを見極めるのが教養や知恵で、そのためにも心と物質社会の動きを切り離して考える習慣をつけることである。企業では本社から指示が出るが、その指示に対して「自立」していないと組織の奴隷、数字の奴隷になってしまう。(全12話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:21
収録日:2023/10/18
追加日:2024/01/05
カテゴリー:
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≪全文≫

●理念が実現された状態に向かうと、敵味方も目標もなくなる


―― 先ほどの田村先生から「企業は勝たなければいけない」というお話がありました。企業が勝つためには、誰かを倒さないと(ならない)。例えばアサヒビールのシェアを奪わないと、キリンビールは勝てないと。

田村 結果として、ですね。結果論では。

―― それが「利他なのだ」といったとき、表面的には矛盾するように感じますが…。

田村 それは違います。「お客さんに喜んでもらう」を追求していくと、お客さんのことだけを考えるようになるのです。ライバルメーカーがいて、ライバルメーカーのお店ができるとキリンを飲めない店ができてしまう。これは理念的に見たらダメで、だからキリンに変えてもらう。

執行 これは蹴落とすのとは違う。

田村 そう、これは敵ではないのです。

―― なるほど。

田村 相手にしているのは、お客の心だけ。その心に満足してもらう。キリンを飲んで喜んでもらうには、そうした活動が必要だからやるだけ、という話です。

執行 これは勝ち負けとは違うと思う。

田村 だから、「勝て」と指示したことがありません。

執行 「勝ち負け」という思想は、多分アメリカンビジネスだと思います。

―― なるほど。

執行 だから(ジョン・)ロックフェラーがスタンダード石油を作る際、乗っ取りによって200人以上が首を括ったと言われています。あれは「どちらが勝つか」(という世界)です。

田村 そうですね。

執行 だから、ロックフェラーも年を取ってから慈善家になったのです。日本やヨーロッパの商売は違います。

田村 ライバルは敵ではない。相手にするのは、顧客の心だけです。だから、目標もありません。

執行 企業相手ではない。顧客の心をつかむ。つかんだ人が、勝ち負けで「勝った」とは言わないでしょう。

田村 そう。満足とか愛です。

執行 アサヒビールがダメになったのなら、アサヒは怠けて顧客が何を求めているかがわからなかったというだけです。別にキリンに負けたわけじゃない。

田村 そうです。それだけです。だから、すごくシンプルなのです。目標設定もそうです。理念が実現された状態に向かっていくと、敵味方はなくなり、目標もないのです。だから、私は目標を作りませんでした。作れないのです。日本人を幸せにする目標など、ないですから。だからよか...
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