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最善が堕落したものは最悪である…無限なのは理想や魂のみ

日本企業の病巣を斬る(3)足るを知る

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
日本の企業には伝統的な成功パターンがある。三井越後屋は地域密着型の商売を行い、300年繁栄を続けているが、これは当主が「足るを知る」をわきまえていたからだ。ローマ帝国の有名なことわざに「最善が堕落したものは最悪である」というものがある。たしかに理想や魂は、本来が無限のものだから、その最善を追い求めるのはいい。だが、その理屈を肉体や物質社会や経済成長に当てはめると、逆効果となってしまう。つまり、「最悪」になりかねないのだ。(全12話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:37
収録日:2023/10/18
追加日:2023/12/15
カテゴリー:
≪全文≫

●日本の伝統的な成功パターンをやればいい


田村 だから、「国民(すべて)を幸せにする」ということ(理念の実現)は不可能ですが、でもそこへ向かい、それを実現することを組織の目標にしたのです。

 (会社には)理念や使命がありますが、それを単なる心構えで終わらせるのでなく、どんなことがあっても実現する。それを実現した状態とは、具体的にはすべての人にキリンビールを飲んで喜んでもらうことです。そこへ向かう。「それ以外やるな」という話です。

執行 そうですね。

田村 そこへ向かっていると、人間の心が変わってきます。だから、これでいいのです。

 これに可能性があるのは、企業は利益を上げ続けないといけないから、お客さんの支持や信頼を得続けないといけないので、「お客さんのために」ということです。

 そのために行動していく。するとお客さんからいろいろな反応があり、それで奮い立ったり、いろんな発見があったりする。また、そこでモチベーションが出てくるというのは、日本の伝統的な成功の一つのパターンです。これをやればいい。

執行 それが循環経済です。

田村 そうです。

執行 例えば江戸時代は、地域密着型でお客さんのためになっている商売が300年間繁栄しています。一番みんなの記憶にあるのは三井越後屋で、300年間繫栄しています。

田村 そうですね。

執行 でも今の数字でいえば、これ(頭打ち)です。

田村 そうでしょうね。あるところまで行ったら、止まるというのはあります。

執行 ただ今の田村さんの話は言っていることは正しいけれども、「心」の問題と「ビジネス」の問題がわけられていないということです。心持ちは、理想を追いかける。それは私もいつも言っていることです。

 でも現実のビジネスは、循環を求めなければダメです。だから、永遠の金儲けはできない。永遠に数字が上がっていくのは無理なことで、絶対ダメです。

 これは詳しく言うと、もともとキリスト教から出た考えです。心の問題をビジネスに適応して、英米が18世紀に新しい経済思想を作り上げたのです。つまり、根本を言えば、キリスト教から「神」を抜いた。するとキリスト教はヒューマニズムなど「いいもの」「いいこと」ばかりです。それを英米の哲学者は、経済問題に結びつけた。

 我々はみんな西洋の素晴しい理念に憧れましたが、キリスト教は(...
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