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オーバープランニングやオーバーアナリシスをどう変えたか

日本企業の病巣を斬る(4)全社改革の断行

対談 | 執行草舟田村潤
情報・テキスト
多角経営で失敗するのは、「足るを知る心」や「わきまえ」がないからである。物質には限界があるが、心は無限に成長できる。その点をふまえずに、ライバルメーカーの真似ばかりして成長しようとしても、うまくいくはずがない。「心」や「理念」の重要性を、しっかりと理解する必要がある。では、田村氏がキリンビールの副社長に就任したときに、オーバープランニング、オーバーアナリシスの問題をどのように変えていったのか。具体的な方法を語る。(全12話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:27
収録日:2023/10/18
追加日:2023/12/22
カテゴリー:
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≪全文≫

●「多角経営」をどのように考えるか


―― 最近、特に高度経済成長以降、企業によってはジャンルをいろいろ増やしていくケースがあります。例えばホンダは、バイクから入り、四輪車に行った。今は飛行機もやりだし、一定の成功を収めています。

 理想の部分で言えば本田宗一郎さんの夢に向かって、つまり、モビリティでいかに人間の自由を発揮するかというところに向かっていると思います。ただし利益の大部分は、今もバイクが稼ぎ出しています。それを飛行機事業に使い、ほかの航空機メーカーではできない工夫をするといった形で、どんどん展開していく、という考え方があります。そういうあり方は、企業としてはだんだんと詰まってくると、どんどん難しくなってくるのは間違いないと思いますが、そういう考え方はどう思われますか。

執行 それも頭打ちがありますね。だから、多角経営に乗り出した会社は全部ダメになるでしょう。

―― それも多いですね。

執行 三井越後屋が300年成功したのは、絶対にずれなかったからです。両替と呉服。これ以外やらなかった。どんなに儲かっても、ほかの商売はやらない。それも全部「わきまえ」という道徳で、それが昔は「足るを知る」というものに入っていたのです。

 これは日本だけでなくドイツもフランスも、昔続いた商売は全部同じ、「足るを知る」です。文学にもたくさん書かれています。

 なぜ「足るを知る」か。もう一回言うと、物質には限界があるからです。われわれがどんなに頑張っても、人間には平均身長があって、ここから大きくはなれない。子どもの頃、「たくさん食べて早く大きくなれよ」と親に言われますが、それは二十歳までの話です。二十歳を過ぎたら、いくら食べても大きくならない。それがわからなければダメということです。

 でも人間には成長する部分もあり、それが心です。心は死ぬまで無限に成長します。その無限成長の概念をアメリカは独立宣言のときに導入した。(もっというと)“神”がいての話だった無限成長の概念を経済にも導入したのです。これは導入した頃は素晴らしい経済理論で、これにより英米は大成功した。(ただし)その大成功も、限界はあるということです。

田村 先ほど(のキリンビール)の話も、量の制限はあるけれども魂は無限成長するという実例です。だから振り返るとこの4大疾病は、結果のような気がします。会社の会議を思い出しても、あるときからすごくレベルが下がっています。

執行 飽和状態だからです。

田村 そうですね。それと、理念的なものが語られなくなったときがありました。キリンだけでなく、どこでもある話で、これは日本人らしさがなくなったからです。

 キリンの危機は、キリンらしさがわからなくなったからです。売れなくなって何をやったかというと、ライバルメーカーの真似ばかりやったのです。

執行 そうですね。横を見る(ということだ)と。

田村 そうです。いいところを見て取り入れた。

執行 でも理念は上にある。垂直だから。

田村 横を見ているうちに、垂直がわからなくなった。それで危機になったのです。高知でやったのは、そこをもう一度取り直す作業でした。

執行 だから全部そうなるのです。

田村 だから、日本で今そうなっているのは、日本の喪失があったからです。本を読むと明治の先の頃とか、戦争に負けた頃とか。

執行 明治から起こっていますね。

田村 そして今は、戦前の教育を受けた人が大量にいなくなり、空洞が起きた気がします。そのときに、この4大疾病やアメリカンビジネスが心の中に入ってきたのです。

 当時の日本経済はすごくよかったのに、これらがスーッと入ってきたのは、そもそも日本らしさが見失われていたからです。だから、今後必要な作業は、このことが何ものかを定義し、確立することです。これを企業でやるべきだと思ったのです。

執行 だから、心と物質が違うということを、もう一度わかるようにしなくてはダメだということです、人間は。志はどんどん高くならなければダメだけれども、志がどんなに高くなっても、たとえば強くなるのに筋肉量を増やすのは限界がある。どんな人でも食べる量には限界がある。それを超えては誰もできない。その量をわかるのが、昔は教養でした。この塩梅、バランスを決めるのが教養なのです。教養というのはそういう定義なのです。

 自分が置かれている心の問題と物質の制約を受けているという問題がどこで拮抗しながら、うまくバランスを取り、心の成長だけ続けていけるところに、経済が落ち着けるかどうかです。だから、どの程度で(そう)なるかが問題なのです。

田村 ただ、会社の理念や使命を果たそうと考えて行動していると、魂が磨かれていきます。そこへ向かっていくだけで、私の理解ではそこで十分...
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