●最大の既得権は社会保障、そこに切り込むには企業しかない
執行 一つ田村さんの意見を聞きたいと思っていたのですが、今、理論的にいろいろな問題を話しまして、日本社会もヨーロッパもアメリカもイギリスも、一番どうにもならない状態に社会がなっているのが既得権です。
この既得権の問題をある程度解決できないと、どの国の経済成長も、いい状態に戻ることはできません。既得権をどうやって、みんなが道徳的に捨てることができるか。そういう問題があるのです、企業というのは。
田村 企業の問題ですか、
執行 企業もそうだし、国もそうです。
田村 企業の既得権というのはよくわからないのですが、日本の場合、いろんな利害関係者が意思決定をする仕組みになっていて、そこは既得権の塊です。いろいろやっても規制緩和ができないのは、それぞれが既得権を持っているからです。
執行 ヨーロッパも全部そうです。
田村 ヨーロッパもそうですか。ヨーロッパやアメリカは民主主義がまだ機能している気がしましたが、していないのですね。
執行 全然していない。民主主義は日本のほうが、悪い意味でまだ機能しています。適当だから、日本人は。
日本人はなあなあで適当だから、悪い意味では民主主義的。もともと日本人は古代から民主主義です。世界レベルでいえば、日本ほど民主的な国はありません。家族主義とは民主主義ということですから。
田村 私は日本のビールメーカーにいたので、いかに規制が霞が関の権限になっていて、生産性を下げているか、わかっていました。
―― 具体的にどういうことでしょう。
田村 規制により官僚は許認可権を得るので、力を持てます。だから「もっと規制を増やそう」という方向に必ず行きます。自分の省や局に審議会を作っているし、意思決定機関は全部、官僚が中心になっています。それに付随する業界団体があり、これらがワンセットになって一つの完成されたシステムになっている。そこを突き崩すのは本当に大変です。
執行 ちょっとでもそうでしょう。私が一番大変だと思っていることですが、立ち直りを考えたときの議論というのは、どの国もどうしようもなく動けない状態になったのは、既得権があるからです。既得権が頂点に来ている。世界中がそうです。
田村 日本は一時、規制緩和の流れが少し出ましたが、止まったのは景気が悪くなった...