●どうして「何のために仕事をしているのかわからなくなる」のか?
―― 皆さま、こんにちは。本日は「日本企業の病巣を斬る」というテーマで両先生にお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
田村 よろしくお願いします。
執行 はい、どうも。
―― 日本企業の病巣について、田村先生から「4大疾病がある」と伺いました。「オーバープランニング」「オーバーアナリシス」「オーバーアダプテーション」「オーバーコンプライアンス」です。それぞれ、どういうことでしょう。
田村 「オーバープランニング」「オーバーアナリシス」「コンプライアンス」は、世界的な経営学者の野中郁次郎さんがおっしゃったものです。最近それに加えて「オーバーアダプテーション」というものが出ています。
オーバープランニングは「過剰なる計画」です。オーバーアナリシスは「過剰なる分析」。オーバーコンプライアンスは「過剰なる法令順守」。オーバーアダプテーションは「過剰適応」です。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)といえばSDGs、ROE(自己資本利益率)といえばROE、それらにどんどん適応して過剰適応してしまう。
執行 要するに、オーバーコンプライアンスから出てきたものですよね。コンプライアンスをやり過ぎて、なってしまったと。オーバーアダプテーションは野中郁次郎さんの理論があった頃から出ていましたか。
田村 いえ、出ていません。
執行 最近ですよね。だから、たぶん(オーバー)コンプライアンスをやっていると、行き着いて(オーバー)アダプテーションになってしまうと。そういう状態でしょう。
田村 そうですね。プランニングやアナリシスも、アメリカのMBA(経営学修士)に過剰適応している側面がありますから、根っこは似ていると思います。
執行 そうですね。
―― これらは実際に働いている方にとって、思い当たる節があるというか、困っている部分も多いように思います。それぞれ先生方に伺いますが、まずオーバープランニングとオーバーアナリシスは現場ではどのような現象として現れるものでしょう。
田村 企業は成長しなくなっていますから、なんとかしようと分析をして、プランを立てます。それでも業績が悪いとなると、さらにプランを増やす。プランが増えれば増えるほど、現場に「もっとこんなことをやれ」と要求をどんどん出す。現場が疲弊し...