●理想へ向かうと「自分の強み」が発揮される
執行 (前回の話のように、上から言われたら、やらなければならないというのが鉄則ですが)やり方は十人十色になります。
田村 そう。
執行 自分のやり方を導き出せる人がいい、ということです。
田村 だからメンバーが、どんどん個性的になってきました。
執行 日本人はわりと、それが強いのです。本当は。
田村 だから理想へ向かうと「自分がこうやりたい」というものが出てくる。得意先も全部、言っていることが違う。それぞれに正解を見つけて、やるしかない。そこで個性が出てくる。自分の持ち味みたいなものが自然と出てくる。男女は関係ない。ただ、そこへ向かうと自分の強みが発揮されるから、結果として女性や若者は伸びてくる。それを枠組みから入っていくと、おかしなことになってしまう。
根本はやはり「会社の使命を果たす」です。そこに向かって一人ひとりが何をやったらいいか考え、議論して、自分で決めていけば個性的になる。人間性が生かされ、自分らしくなってくる。「この人間は、こんなに素晴らしいのか」と。
執行 野中(郁次郎)さんの理論でいうと、暗黙知と形式知のうち、日本人は西洋、(特に)アメリカの真似ばかりすることで、暗黙知が出にくい社会になっている。
田村 そうですね。
執行 コンプライアンスは、特にそうです、日本にない考えだから。(日本人は)暗黙知が世界で一番ある民族で、これは縄文以来の知恵です。
一つの違いとして、例えば日本は世界で一番、物作りの中小企業が多いといわれます。相当潰れましたが、今でも一番多い。韓国や中国にはほとんどない。アメリカもあまりない。つまり、底辺を支える実力がすごくあるのです。
田村 そうですね。
執行 だから、戦後のアメリカンビジネスで、大企業優先方式の経済成長になって日本は苦しんでいるのです。中小企業が多いとは、暗黙知が多いということです。
田村 そうですね。暗黙知は大企業の中にもありましたが、問題は会議で決めていくことです。会議は全部、形式知じゃないと議論できない。今から思うと、本当に大事なことが暗黙知として喋れず、全部切り捨てられて結論を出していた。これがうまくいかなかった大きな理由です。
本当に大事なものは言語化できない。でも、あるときピンと来ることがある。そこで初めて言葉にし...