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知識は主観的であり、真実にしていくプロセスである

知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(4)そもそも知識とは何か

遠山亮子
中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授
概要・テキスト
知識は人、物、金と違って、関係性の中でつくられる。人と人とが関係する中でつくられるものだということである。そして知識は、信じられ、真であり、正当化されるものと定義される。特に知識にとって重要なのは、信じることである。(全9話中第4話)
時間:11:22
収録日:2018/11/24
追加日:2019/08/22
≪全文≫

●「人が関係性の中でつくる資源である」とはどういうことか


 「人が関係性の中でつくる資源である」とはどういうことか。第一に、人と人との関係性や人と環境との関係性を考えることが、知識を考える上では非常に重要になるということです。近代科学は「要素還元型」といわれています。それは物事をどんどん小さくしていけば理解できるようになるということです。物質を分子に還元し、原子に還元し、素粒子に還元していけば、物質のことがよく分かる。人間を臓器に還元し、細胞に還元し、DNAに還元していけば、人間のことが分かるようになるというのが近代科学です。

 でも知識においては、その間の関係性を見ていく必要性があります。奥さんが、「あなた、私のこと分かってないわ」といったとき、奥さんをDNA解析して「これが君だ」といったらぶっ飛ばされますよね。「あなた、私のこと分かってないわ」というのは、あなたと私の関係性の問題です。その奥さんは、例えば近所の人であったり、子どもであったり、その奥さんの親であったり、そういう人たちとは、また別の関係性を築いています。そのときには、その奥さんはまた別の人だということです。

 それと同じように、知識というものを考えるときには、人と人との関係性、あるいは人と環境との関係性というものを考える必要性があるのです。だから、物事を細かく分析していくだけでは不十分だということになります。

 もう一つ、「人がつくる資源である」とはどういうことかというと、当たり前ですが、人は一人一人違うということです。そうすると、人が主観というものを取り扱う必要性があります。私がどう思うかということを考えます。私が見る世界と、あなたが見る世界は違うということを、どう一緒にしていくか。違うだけでは駄目なのです。これをどう綜合していくかが必要になるということです。

 もう一つ、これは当たり前のことですが、人には心があります。物ではありません。機械の部品でもありません。人ですから、心があります。実は、知識においては人の価値観とか感情とか人が持つ理想とか、そういうものがものすごく大きく関わっています。こういうことを無視して人を単純に機械の部品と考えて取り扱うと、知識というものを理解できないということになる...
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