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「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める

知識創造戦略論(2)イノベーションとプロセスの質

遠山亮子
中央大学 ビジネススクール大学院 戦略経営研究科 教授
情報・テキスト
イノベーションを起こすとき、もっとお金があればと思う人は多いが、実はそれが必ずしもいい結果に結び付くとは限らない。イノベーションの結果を決めるのは「プロセスの質」だという。今回は、イノベーションについて見ていく上で考えなければいけないポイントを解説する。(全9話中第2話)
時間:09:17
収録日:2018/11/24
追加日:2019/08/22
≪全文≫

●「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める


 イノベーションは物の生産とは少し違います。物の生産には、実は「生産関数」と呼ばれるものがあって、これは簡単にいうと、どれぐらいのインプットを入れたら、どれぐらいのアウトプットが出るかということがあらかじめ予測できるということです。ところが、イノベーション理論では、そういう生産関数で予測することができません。これだけ頑張った、これだけお金も使ったから成果が出る、とは限らないということです。

 ブーズ・アレン・ハミルトン(Booz Allen Hamilton)というコンサルティング会社が世界の大企業1000社を調査した結果、分かったことは、研究開発費の増加は、より良い成果には必ずしも結び付かないということです。英語の文ですが、「ポケットブック(小切手帳)ではなくてプロセス」とあり、「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決めるのであって、お金が決めるわけではないということです。イノベーションを起こすときに、もっとお金があればと思う人は多いと思いますが、実は、それが必ずしもいい結果に結び付くとは限りません。

 では「プロセスの質」とは一体、何なのかというお話を、今後していきます。


●イノベーションとオペレーションは違う


 イノベーションとオペレーションは違います。数年前まで中央大学で客員教授をやっていた小林三郎さんという、ホンダでエアバッグを開発した人がいます。大変面白い人です。今、アカデミーの方で事業を持ってもらっているのですが、その人が言っていますが、オペレーションとイノベーションは違って、企業はオペレーションも大事です。オペレーションとは決まったことをきちんとやることです。

 企業の業務の95パーセントはオペレーションの話なのですが、成功率は95から98パーセントです。要するに、それ以上、失敗する率が高いと企業として成り立たないということです。ちゃんと物が生産できるとか、ちゃんと販売戦略が実行されるとか、そういったものがオペレーションです。

 手法としては論理分析ですが、イノベーションは業務の中でわずか2から5パーセントぐらいしか占めていません。期間がずっと長くて、成功率は10パーセント以下です。多くの場合、問題は、企業が多数派であるオペレーションの論理でイノベーションを仕切ろうとしてしまうことです。

 ところが、オペレーションとイノベーションは全然違う論理でできあがっている活動です。例えば、オペレーションは2パーセント、あるいは5パーセント失敗したら、もう大ごとなのです。だから常に「大丈夫か、大丈夫か」「これ失敗しないのか」「ちゃんとやれるのか」ということで、オペレーションですから、それがやれていないと駄目なわけです。

 ところが、イノベーションの場合、成功率10パーセント以下なので、大多数は失敗するわけです。小林さんが言っていたのは、イノベーションにおいて上司が一番いってはいけないことは「大丈夫か、それ」ということです。大丈夫なわけがないのです。90パーセント失敗するわけですから。大丈夫だと最初から分かっていたら、そもそもイノベーションになりません。新しい価値を創造することなので、失敗するか成功するか分かりません。それがイノベーションであって、最初から大丈夫だと分かっていたら、そんなものはイノベーションでも何でもないのです。だからそれを分からずに、あるいはオペレーションにどうしても引きずられてしまって、オペレーションの論理でイノベーションを仕切ろうとすると失敗してしまうということになります。


●現代は技術普及のスピードが加速している


 もう一つ、今現在、「イノベーションが必要です」と皆が言っていますが、ではどういう時代にわれわれは生きているのか、ということです。現在は非常に技術普及のスピードが加速している時代です。上のグラフは、これらの技術が世帯普及率10パーセントを達成するまでにどれぐらいかかったかというものです。実は、電話が76年もかかりました。ですが、ファクシミリは19年、携帯や自動車電話は15年、インターネットはわずか5年で世帯普及率の10パーセントを達成しました。スマホになると、日本でiPhoneが発売されたのは2008年なのですが、それからわずか2年後の2010年には世帯普及率9.7パーセントを達成しています。

 つまり今は、一ついい技術があるとあっという間に普及するという時代なのです。あっという間に普及するとはどういうことかというと、競争相手が次々と出てくるということです。一個いい技術をつくったからといって、そのまま食べていける時代ではなくなってしまっ...
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