●「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
イノベーションは物の生産とは少し違います。物の生産には、実は「生産関数」と呼ばれるものがあって、これは簡単にいうと、どれぐらいのインプットを入れたら、どれぐらいのアウトプットが出るかということがあらかじめ予測できるということです。ところが、イノベーション理論では、そういう生産関数で予測することができません。これだけ頑張った、これだけお金も使ったから成果が出る、とは限らないということです。
ブーズ・アレン・ハミルトン(Booz Allen Hamilton)というコンサルティング会社が世界の大企業1000社を調査した結果、分かったことは、研究開発費の増加は、より良い成果には必ずしも結び付かないということです。英語の文ですが、「ポケットブック(小切手帳)ではなくてプロセス」とあり、「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決めるのであって、お金が決めるわけではないということです。イノベーションを起こすときに、もっとお金があればと思う人は多いと思いますが、実は、それが必ずしもいい結果に結び付くとは限りません。
では「プロセスの質」とは一体、何なのかというお話を、今後していきます。
●イノベーションとオペレーションは違う
イノベーションとオペレーションは違います。数年前まで中央大学で客員教授をやっていた小林三郎さんという、ホンダでエアバッグを開発した人がいます。大変面白い人です。今、アカデミーの方で事業を持ってもらっているのですが、その人が言っていますが、オペレーションとイノベーションは違って、企業はオペレーションも大事です。オペレーションとは決まったことをきちんとやることです。
企業の業務の95パーセントはオペレーションの話なのですが、成功率は95から98パーセントです。要するに、それ以上、失敗する率が高いと企業として成り立たないということです。ちゃんと物が生産できるとか、ちゃんと販売戦略が実行されるとか、そういったものがオペレーションです。
手法としては論理分析ですが、イノベーションは業務の中でわずか2から5パーセントぐらいしか占めていません。期間がずっと長くて、成功率は10パーセント以下です。多くの場合、問題は、企業が多数派...