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SECIモデルから暗黙知と形式の相互変化を考える

知識創造戦略論(8)SECIモデルによる暗黙知の形式知化

遠山亮子
中央大学 ビジネススクール大学院 戦略経営研究科 教授
情報・テキスト
暗黙知と形式の相互変化を考えるためには、SECIモデルが重要だ。これは、暗黙知を暗黙知に変換する共同化、暗黙知を形式知に変換する表出化、形式知と形式知を組み合わせる連結化、形式知を暗黙知に変換する内面化の四つの部分から成り、それぞれの頭文字をとってSECIモデルと呼ばれる。(全9話中第8話)
時間:13:18
収録日:2018/11/24
追加日:2019/08/29
キーワード:
≪全文≫

●SECIモデルからみる暗黙知と形式知の相互変化


 では知識がどうやってつくられていくかという話に移ります。知識は、暗黙知と形式知の相互変化によってつくられると知識創造理論では考えています。

 これはSECIモデル、SECIプロセスといいます。これはもともと英語で出版された本に基づくもので、Socializaiton(共同化)、Externalization(表出化)、Combination(連結化)、Internalization(内面化)の、S、E、C、Iの頭文字を取ってSECIと読んでいます。これは、ずっとぐるぐる回っているプロセスなので出発点も終わりもないのですが、話しやすいので共同化から話を始めます。


●共同化は暗黙知を暗黙知に変換し、共有するプロセス


 共同化プロセスは、暗黙知を暗黙知に変換するプロセスです。具体的には身体や五感を駆使して、直接経験を通じて暗黙知を共有したり蓄積したりするプロセスです。暗黙知は自分の経験を通して蓄積されていく知なので、直接の経験が大事です。例えばシェフになりたいという人は、どんなに料理の本を読んでもそれだけではシェフにはなれないでしょう。

 その人はレストランに行って、修行をして、実際、自分の手を動かして五感を駆使します。耳で料理の音を聞いて、鼻で匂いをかいで、目で親方がやっていることを見て、舌で味わって、料理という技術を身に付けていきます。これが共同化プロセスです。


●表出化は暗黙知を形式知に変換するプロセスである


 次のプロセスが表出化(Externalization)です。これは暗黙知を形式知に変換するプロセスです。対話や試作というのは自分自身との対話のことで、それらによって概念やデザインをつくっていくプロセスですが、先ほどの例でいえば、そうしてシェフがレシピを書くということです。すると、その料理の知識は他の人に広く伝えることができます。そっくりさんは、同じ味でなくても似たような味の料理を作れるようになります。

 このとき、自分の暗黙知を表出化する他に、他の人の暗黙知を翻訳することもできます。先ほど表現力の話をしましたが、自分の考えや自分の技術を言葉で表現するのがうまい人もいれば、そうじゃない人もいます。よく職人は口下手な人が多いといわれますが、その場合、誰かがインタビューして、その職人の技能を伝えるということをします。そうして、暗黙知を持っている人以外の人が翻訳するというのも表出化です。


●連結化は形式知を組み合わせて新たな知識を創造する


 連結化は形式知から形式知への変換プロセスで、これは形式知の組み合わせによって新たな知識を創造するという作業です。

 例えば、いろんなレシピを集めてきて料理の本を作ります。一つのレシピでは、料理の本はできません。いくつもの知識、レシピが集まって、一つの料理の本ができます。このときに重要なのは編集の作業で、どういうレシピを集めて、どういう編集を施すかによって、全然違う料理の本ができます。日本料理の本もできれば、卵料理の本もできれば、男のためのクッキングの本もできれば、15分料理の本もできます。どういう知識を集めて、どういう編集を施すかによって、どういうものができるかは変わってくるということです。


●内面化は形式知を暗黙知に変換するプロセスである


 内面化は形式知を暗黙知に変換するプロセスです。これは形式知を行動や実践のレベルで伝達して、新たな暗黙知として理解、学習するプロセスです。例えば、料理の本を買ってきた人は、それを眺めているだけではその料理の知識を自分のものにすることができないわけです。一度、その料理のレシピにしたがって、実際に自分の手を動かして、例えば焦がしたりしながら何回か作ってみて、初めて、そのレシピに書いてある料理の知識は自分のものになります。だから、知識をいったん自分の中で消化して(内面化して)、自分自身の暗黙知にしていくという作業が必要です。これが内面化です。

 ここで、内面化された料理の知識は、自分がもともと持っている他の料理の知識と結び付いて共同化が起こって、また別の料理のアイデアができて、また別の料理のレシピが生まれるかもしれません。だから、これがぐるぐる回っているのですが、これを「SECIスパイラル」と呼んでいて、願わくばスパイラルアップしたい、ということです。つまり、このプロセスを繰り返すうちに知識の質や量が上がっていくことが望ましいのですが、どこかでこのプロセスが阻害されるとスパイラルダウンが起こります。これが回っていくうちに、知識の質や量が下がっていってしまうことが起こります。

 例えば、共同化がうまくいかないと、暗黙知が十分に蓄積されません。先ほど言ったように、一遍、形式知化してしまった暗黙知は、もう広げるのを止め...
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