●SECIモデルからみる暗黙知と形式知の相互変化
では知識がどうやってつくられていくかという話に移ります。知識は、暗黙知と形式知の相互変化によってつくられると知識創造理論では考えています。
これはSECIモデル、SECIプロセスといいます。これはもともと英語で出版された本に基づくもので、Socializaiton(共同化)、Externalization(表出化)、Combination(連結化)、Internalization(内面化)の、S、E、C、Iの頭文字を取ってSECIと読んでいます。これは、ずっとぐるぐる回っているプロセスなので出発点も終わりもないのですが、話しやすいので共同化から話を始めます。
●共同化は暗黙知を暗黙知に変換し、共有するプロセス
共同化プロセスは、暗黙知を暗黙知に変換するプロセスです。具体的には身体や五感を駆使して、直接経験を通じて暗黙知を共有したり蓄積したりするプロセスです。暗黙知は自分の経験を通して蓄積されていく知なので、直接の経験が大事です。例えばシェフになりたいという人は、どんなに料理の本を読んでもそれだけではシェフにはなれないでしょう。
その人はレストランに行って、修行をして、実際、自分の手を動かして五感を駆使します。耳で料理の音を聞いて、鼻で匂いをかいで、目で親方がやっていることを見て、舌で味わって、料理という技術を身に付けていきます。これが共同化プロセスです。
●表出化は暗黙知を形式知に変換するプロセスである
次のプロセスが表出化(Externalization)です。これは暗黙知を形式知に変換するプロセスです。対話や試作というのは自分自身との対話のことで、それらによって概念やデザインをつくっていくプロセスですが、先ほどの例でいえば、そうしてシェフがレシピを書くということです。すると、その料理の知識は他の人に広く伝えることができます。そっくりさんは、同じ味でなくても似たような味の料理を作れるようになります。
このとき、自分の暗黙知を表出化する他に、他の人の暗黙知を翻訳することもできます。先ほど表現力の話をしましたが、自分の考えや自分の技術を言葉で表現するのがうまい人もいれば、そうじゃない人もいます。よく職人は口下手な人が多いといわれますが、その場合、誰かがインタビューして、その職人の技能を伝えるということをします。そうして、暗...