知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本ロシュにおけるSECIプロセスの事例分析
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(9)日本ロシュのプロジェクト分析
経営ビジネス
遠山亮子(中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授)
日本でのSECIモデルの事例分析として、日本ロシュが取り上げられる。MRという薬の営業は、暗黙知が多く、優秀なMRと平均的なMRには大きな差があった。そこで、優秀なMRが集められ、形式知が始まった。(全9話中9話)
時間:15分46秒
収録日:2018年11月24日
追加日:2019年8月29日
≪全文≫

●暗黙知と形式知のスパイラルアップによって知識が生まれる


 シリーズ内でも以前に引用しましたが、ここで再びトヨタの奥田会長の言葉を引用します。

「IT化により、暗黙知だったものが形式知に移っていくことが出てくるかもしれません。しかし、移っていくけれども、新しい暗黙知もどんどん出てくるわけです」

 だからこれは自動的に出てくるわけではなく、暗黙知の蓄積を強調した共同化をきちんとやらないと出てこないのです。

 そして暗黙知が出てきます。

「当時の社長の渡辺は、暗黙知と形式知がうまくスパイラルアップしていくことで向上する」

 つまり暗黙知だけあっても、形式知だけあっても、駄目なのです。暗黙知と形式知のスパイラルアップで新しい知識ができるということになるわけです。


●日本ロシュにおけるSECIプロセスの事例分析


 もう一つ、SECIプロセスの一例を説明します。

 これは日本ロシュという製薬会社でやったプロジェクトです。ロシュはスイスにある製薬会社で、日本ロシュはその子会社です。その後、ロシュは中外製薬を買ったので、日本でのオペレーションは今、中外製薬の方がやっています。だから日本ロシュという会社自体はもうないのですが、この日本ロシュがまだあった時に、実は社長直轄の「名人芸移植プロジェクト」というものがあって、彼らは「Super Skill Transfer(SST)」と呼んでいます。何かというと、薬の営業はMR(医薬情報担当者)が行うのですが、このMRのスキルは非常に暗黙知ベースで、いわば先ほどからお話ししている営業スキルなのです。これは個人によって、ものすごく大きな差があります。


●薬の営業は四段階に分けられる


 これが優秀なMRと平均的なMRのスキルを比較したものです。MRの活動は四段階に分かれていて、最初は製品や学術知識を取り入れます。この薬はどういう薬で、どういう病気が、どうしてこういう病気が起こって、なぜこの薬は効くのかという知識がないと営業活動できないので、その知識を取り入れる段階です。

 次にターゲティングといって、どのお医者さまに話に行くのか、あるいはどこに話に行くのか。医者の世界はいろいろ複雑なので、最初に話に行く人を間違えると、後...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
ウォーレン・バフェットの成功哲学(1)「世界一の投資家」の実像
世界一の投資家ウォーレン・バフェット…賢人と呼ばれる理由
桑原晃弥

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子