福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
70年代以降の大衆化、根こそぎ変わった日本人の「自然観」
第2話へ進む
小林秀雄から福田和也まで、日本の文芸批評史を俯瞰する
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(1)曖昧になった日本人の「自然」
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
前近代と近代、戦前と戦後といった社会の転換期において、日本人の精神的な拠り所には大きな「ズレ」が生じていた。それを指摘し、そのズレを縫合する方法を模索したのが小林秀雄や吉本隆明といった文芸批評家である。彼らの議論を端緒に、日本の文芸批評はどのように日本人の精神性を論じてきたのだろうか。「自然」をキーワードに、まずは、小林秀雄から福田和也までの日本の文芸批評史を振り返ろう。(全8話中第1話)
時間:11分38秒
収録日:2024年5月10日
追加日:2024年6月16日
≪全文≫

●「自然」とはいったい何か


 皆さん、こんにちは。文芸批評家の浜崎洋介です。今回、またテンミニッツTVで講座をつくることになったのですが、前回、小林秀雄と吉本隆明の2人を題材に、文芸批評とはいったい何をしていく営みだったのかということを、皆さんにお話ししたと思います。

 今回はその続きです。小林秀雄と吉本隆明がまさに「自然」という言葉を見つけ出して、そこに日本人がよみがえる手掛かり、あるいはヒントを見つけ出す、そういった話をしました。では、「自然」とはいったい何なのか、その具体的な形を語りきれなかったところがありますから、それを今回は皆さんと一緒に見ていきたいと思っています。


●時代のズレを縫合するために求められた「自然」という概念


 ということで、まずは簡単に復習から入りたいと思うのですが、「日本文芸批評小史」と題して、日本人の自然観がだんだん曖昧になっていったという話を前回しました。その大きな流れを本当に簡単にですが、まとめておきましょう。

 まずは小林秀雄です。これは、前近代と近代が分裂していたのですが、(彼が)それをどうにかして縫合したい。つまり、江戸期までの日本人の生き方と近代文明化したときの生き方が、やはり西洋化しているがゆえに少し違う。このズレをどう縫合するのかという課題を担っていたのだということを申し上げました。

 そして、彼はそれを乗り越えるために、歴史とか古典、そういったものへとまなざしを向けて、それが依拠しているところの自然を見つけ出したのだという話をしました。

 もう一方で、吉本隆明ですが、今度は前近代と近代ではなくて、戦前と戦後の分裂だったわけです。つまり、戦前における皇国思想、彼は皇国青年でしたが、そこで育った自分自身の内面性と戦後の価値観、民主主義や平和主義ということにもなりますが、(彼は)それをいかにして整合するのかというところに向かっていきました。

 そこで彼が見つけ出したのが、自立の思想的根拠ともいわれますが、「対幻想」という言葉です。対幻想、簡単にいったらセット、対ですから、夫婦とか兄弟といった話です。つまり、性や家族、その家族に基づく教育によって出てくる無意識とか、そういったものです。だとしたら、それらは私たちの「第2の自然」といってもいいのではないのか。だと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子