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寄付行為に表れる社会貢献や人生観は日米でかなり違う

「公益資本主義」の確立に向けて(2)社会貢献や人生観、経済システムから日米の違いを読み解く

原丈人
内閣府参与/国連経済社会理事会特別諮問機関アライアンス・フォーラム財団代表
情報・テキスト
実体経済から金融経済へと移行した米国経済のなかで、いま何が起きているのか。社会貢献、人生観、経済システムから日米の違いを読み解く。
時間:07:47
収録日:2013/11/07
追加日:2014/02/24
キーワード:

●社会貢献や人生観における日米の違い


 アメリカ人と日本人の根本的な違いですが、60年代も70年代もいまも、米国人はビジネスをやっているときには、まず優れたビジネスマンは法律の先に行く。だから法律のないところ、独禁法がないところで、本当は独禁法があったら違法だと言われるような新しいビジネスをクリエイティブに考えて、徹底的にやるわけです。ですから現役な時代にまともな経営者は米国では少ないです。ただし、リタイアするととたんに善人に変わる。巨万の富を何に使うのかと言えば慈善です。そして社会的な名声を得て最後は尊敬されて死ぬというのがアメリカ人の、これは大いにキリスト教の懺悔や宗教的な観念から強い影響を受けている人生観だと思います。

 一方、日本人は貧しいときも豊かになったときもいつでもいいことをしようと思っている人が多いと思います。アメリカだったら寄付は節税の対象にならなければ誰もしません。日本は税制措置がこれだけ少なくても、東北大震災が起きて赤い羽の募金がいるとなると一般の、Tax reductionを考えてもいない人たちがいっぱい寄付をする。これが大きな差だと思います。このような日本人とアメリカ人が持っている大きな社会に対する貢献や人生観に関する違いというのは、寄付の行為を見ればよくわかります。


●実体経済から金融経済に移行したアメリカ


 一方、マクロ的に見て、60年代、70年代、80年、90年、2000年と変化してきたのは、米国の経済の主体が実体経済から金融経済に移行したということです。それに伴って政治に影響力を及ぼす経済のリーダーも、実体経済である製造業のリーダーから金融経済であるウォールストリートに変わってきたということです。

 直近の例で言うのが一番わかりやすいですが、バーナンキさんがQE、量的緩和のExitをしようと一時表明した今年の5月の段階がありますが、あれはどうしてExitに至ったのかというと、米国の経済成長率が高いからです。

 米国の経済成長率の中身は個人消費です。これは話を聞いている人もみんな思うでしょうけれども、個人消費、自分の財布の紐が緩むときは二つしかありません。一つは自分の給料が増えたとき。もう一つは自分が持っている株や土地の値段が上がったときです。米国の中身というのは、給料は増えていないのです。株と土地の値段が上がっているから財布の紐が緩んでいるわけです。要するに資産効果です。しかし、株式や土地の値段は、上がりっぱなしは不可能なのです。実質賃金は生産性の向上とともに上がり続けることは可能です。

 では、経済運営はどうなっているのかというと、実体経済が及ぼす実質賃金ではなく、金融経済が及ぼす資産効果によって運営されているということがここでも明らかになりますね。そうなると、米国の景気の良し悪しというのは株価と土地の値段を上げる、バブルをつくるという時期が景気が良く、バブルが潰れる時期が景気が悪いということになります。このような景気の循環です。

 昔は実体経済ですから、新しい商品をつくった場合にそれを必要とする人間がいて、そうすると生産が増やして販売をしますが、いつもつくり過ぎてしまう。そうすると在庫調整等々の生産調整になってきて、景気が緩やかに後退していく。こういう実態経済での時間をかけての景気の循環から、金融経済のバブルをつくっては潰すということを毎年繰り返すようなタイプの経済運営にアメリカは変わりました。またイギリスも変わっています。欧州大陸や日本はまだそこまでは行っておらず、日本は特に実体経済のほうがまだ強いです。

 ですから、アメリカの60年代から90年代、2000年代にかけての変化で最大のものは、経済の主体が実体経済から金融経済に変わったというところと、それに伴う景気の循環や運営、そうしたものを行っていくリーダーたちの顔ぶれが変わったということです。


●アメリカの経済システムと「会社は株主のものだ」


 たしかに製造業では、製薬や化学など非常に長い時間を必要とする産業もアメリカに残っていますが、自ら新しいものをつくり出すよりもM&Aのほうが彼らも手っ取り早いのです。

 ですから、いまのところ「無」から、ないところから会社をつくり出して行こうという事業モデルを発表する経営者は、アメリカならば非上場でやるか、上場会社であれば、本来ならしなくてもいいような株主に対する説明を何回もして、「こんなことしなくてももっと楽に儲かるのに、なぜわざわざこんなことをしなければいけないのか」というつもりになっている人も多いと思います。

 またシリコンバレーでも5年間、10年間かけてバイオテクノロジーやiPS細胞の山中先生のノーベル賞受賞でいま大変なブームになっていますが、このテクノロジーに対するベンチャーキャピタルの投資というのはほとんど誰も...
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