●「社会的時差ボケ」から睡眠を考える
―― 皆さま、こんにちは。今回は西多昌規先生に「睡眠」と「社会的時差ボケ」にまつわる講義をいくつかいただきます。西多先生、どうぞよろしくお願いいたします。
西多 よろしくお願いします。
―― 今回、睡眠、そして社会的時差ボケということで、睡眠は当然、多くの方がいろいろな問題を感じていらっしゃる部分もあるかと思うのです。一方、この社会的時差ボケという言葉は、もしかするとあまり耳なじみがない方もいらっしゃるかもしれないのですけれど、これはどういう概念になるのでしょうか。
西多 これは自分の体内時計と社会のリズムです。これが合っていないことによるさまざまな問題、心身の不調やパフォーマンスの低下のことを指します。
―― 具体的には心身の問題とか、パフォーマンスの低下はどういうことが起きるのですか。
西多 例えば、皆さんも若い頃は休日に夜更かしして、朝寝坊していたと思うのです。月曜はえらい辛かったと思うのです。というわけで、学校で成績が下がるとか、あるいは会社でパフォーマンスが下がるとか、あるいは眠気が昼間に強くなって居眠りしてしまう、とかです。これがさらに進めば、簡単にいえば心身の不調です。やる気が出ない、意欲が出ない。どうもそれが億劫といった、うつ状態もあれば、からだの原因不明の不調です。胃が痛い、頭が痛い、検査してもあまり異常がないとか、そういった心身の不調です。こういうものが生じるといわれています。
―― ですので、今日はまず睡眠です。良い睡眠、あるいは睡眠の不調がどういう仕組みで起きるのかというところをご説明いただいた上で、社会的時差ボケにまつわる諸々の問題について、ぜひ突っ込んでまいりたいと思います。
西多 はい。
●「中枢時計」が体内時計を司っている
―― まず講義の第1シリーズですけれど、「こころとからだの不調と体内リズム」というところです。ここは全体でどういうようなお話の回でしょうか。
西多 睡眠のお話なのですけれど、後でお話ししますが、睡眠というよりもリズムも大事なのです。例えば8時間寝るということが大事だといっても、夜の12時から8時間寝るのと、午前10時か11時から8時間寝るのでは少し違うわけです。
―― これはやはり違うものなのですね。
西多 そうですね...