シオニズムは、もともとエルサレムの別名である“シオン”の丘をめざす運動としてユダヤ人の間で定義されていたが、イスラエルが建国された今日、それは「イスラエルを守る」という意味合いになってきているという。つまり、シオニズムの動きは、ユダヤ教の伝統的な教義に従えば、辻褄が合わないように見える。メシアの到来を待たずしてパレスチナへの帰還を標榜する背景には、シオニストたちの「世俗性」が大きく影響している。ではこうしたシオニズムの動きとどう向き合うべきなのか。これはユダヤ人だけではなく、人類の課題である。(全9話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●シオニズム=イスラエルを守ること
―― 今(前回)見てきたような、いわゆるポグロム、ホロコーストが起きて、実際にパレスチナの地にユダヤ人の国をつくるのだという流れで、イスラエルができてくるということになると思うのですけれど、その背景となった運動なり、思想的な運動がシオニズムというところになると思うのですが、このシオニズムはどのように理解すればいいのですか。
鶴見 言葉のもともとの定義としては、シオンがユダヤ人の間でのエルサレムの別名みたいになっていまして、シオンの丘は旧市街のいろいろな聖地があるところの一角にあって、それがエルサレムの別名になっています。そこをめざす運動だということで、シオン主義、シオニズムといわれるようになりました。要するに、ユダヤ人の物語の中ではあそこに帰還するというイメージです。人によってどのぐらいのものをパレスチナにつくるか、特に当初は違っていたのですけれど、ちょっとしたユダヤ人のコミュニティがつくれればいいと思っていた人もいれば、なるべく広い範囲でユダヤ人が集まったほうがいいという人もいた、という感じです。
今ではもうイスラエルができていますので、そのイスラエルを守ることがシオニズムという意味合いにかなりなっています。
―― 思想運動としてはいつぐらいからの理解になりますか。
鶴見 集団的にそういう運動ができたというのは、1882年のロシア帝国においてです。その前からもそういう発想が多少出ることはあったのですが、だいたい単発のもので終わることが多くて、まとまった運動となったのは今いった時期です。
●シオニズムという発想の転換
―― 今のようなシオニズムの運動を背景にして、実際にイスラエルという国を建国するにあたっては、イギリスが第一次世界大戦に勝つためにいわゆる三枚舌外交ということで、実際にユダヤ人にはそのように建国をするのだとして、その半面、アラブの人たちにも独立を支援するのだというようなことを約束していくという背景があって、(イスラエルが)できていくというところになると思うのです。
その上で、今のイスラエルもそうですけれど、例えば右派と左派とか、そういうものがあったりと、ユダヤ人の中でもここに至るいろいろな流れがあったと思うのですが、これについてはどうでしょうか。
鶴見 もともとはシオニストの間でもいろいろな意...