教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」
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ユダヤ人迫害を生んだ「権力者・ユダヤ人・民衆」の三者関係
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(5)キリスト教と反ユダヤ思想
鶴見太郎(東京大学大学院総合文化研究科 地域文化研究専攻 准教授)
スペインの「スファラディーム」、ドイツの「アシュケナジーム」を中心に世界の各地へと分かれて移り住んでいったユダヤ人。しかし、キリスト教圏でユダヤ人が生きていくのは容易ではなく、さまざまな形での迫害や差別があった。なぜそれが大規模で起こってしまったのか。キリスト教と反ユダヤ思想について掘り下げながら解説する。(全9話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:9分25秒
収録日:2025年12月5日
追加日:2026年4月21日
≪全文≫

●「スファラディーム」と「アシュケナジーム」


―― あと、ユダヤ人の背景、今のユダヤ人といわれる人たちの源を辿っていったときによく言われるのが、「スファラディーム」という言葉と、「アシュケナジーム」です。それぞれの流れがありますよというようなことがあります。私もその言葉自体は聞いたことがあったのですけれど、初めてこの本(『ユダヤ人の歴史-古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』)で知ったのが、スファラディームがいわゆるユダヤ教の言葉でスペインを意味して、アシュケナジームという言葉がドイツを意味するということで、このあたりについてご説明していただけますか。

鶴見 古代から中世にかけて、ユダヤ人がパレスチナ以外のところにどんどん分かれて、散っていく過程で、スペイン方面に流れたユダヤ人とドイツ方面に流れたユダヤ人がいたのです。

 スペイン帝国は中世に非常に栄えたので、交易、あるいは手工業、あるいは学問などでかなりスペインあたりにユダヤ人が集まりました。

 他方でドイツのあたりにも、しばらくユダヤ人が残って、特に中世でキリスト教の信仰が高まったりしたときに、西ヨーロッパの、今のフランスとかイギリスあたりでは、追い出されたことがあったのですが、ドイツではそういう流れがありつつも、もう少し国が小さく分かれていたので、「別にユダヤ人オッケーだよ」と言ってくれる領主もいたのです。そういうところでけっこう残っていて、しばらくドイツあたりで活躍し続けました。

 その2つの大きな流れがあった中で、それぞれずっと安泰ではなくて、スペイン方面でもドイツ方面でもキリスト教がさらに強まったりとか、いろいろな流れの中で、最終的に追放されてしまうのです。(そこで、その地を)出ていくか、キリスト教に改宗するかということを迫られて、出ていった人たちがさらに別のところに移っていきました。

 そうすると、それでももともといた地域の習慣とか言語は保ち続ける傾向にあって、スペインから出た人はスペイン語起源の言葉ですが、これをずっと使い続けて、そこで培ったユダヤ教の習慣みたいなものをずっと受け継いでいきました。主にオスマン帝国は「ユダヤ人ウエルカム」と言っていたので、そこにしばらく何世紀か落ち着いて、その人たちをスペイン系のユダヤ人ということで、「スファラディーム」と呼ぶようになりまし...

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