AI時代において人間が果たすべき役割を考える上で、リベラルアーツ教育の重要性が再認識されている。その起源は中世ヨーロッパの大学にあり、専門学部へ進む前の共通教養として、修辞学や幾何学など7科目の基礎教育が確立された。この教育はアメリカで独自に発展し、歴史や数学、文学など幅広い分野で教養を育むことで、牧師のみならず政治家や軍人、実業家といった社会のリーダーを輩出する仕組みとなった。一方、貴族社会だったヨーロッパでも、フランス革命以降エリート養成において、神学に代わる世俗的な哲学を中心としたリベラルアーツが不可欠となった。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●そもそも、リベラルアーツとは何か
―― そうしますと、今のお話を通じて、人間としてやるべきことがどういうことなのかということも少しずつ見えてきた気がします。今のお話からすると、これから人間としてどうリベラルアーツを身につけるべきか、(どうお考えに)なりますか。
橋爪 そこが本質ですね。まずリベラルアーツとはどういうものなのかということだけれど、ご承知のように、中世にヨーロッパに大学があって、大学には4つの専門職がある。(まず)神学。神父を養成するので大事。(次に)医学。お医者さんがヤブ医者では困るから、しっかりと医学部でトレーニングする。(続いて)法学部。法律の専門家を作る。ヨーロッパ世界の特徴だけれど、神学部と法学部は無関係なのです。
―― なるほど。
橋爪 どうしてかというと、神学部はキリスト教の教義や聖書を研究する。ヨーロッパの法学部はローマ法を研究する。ローマ法は、ローマ時代にみんなが使っていた商法とか、ヘレニズム世界(あるいは)ローマ帝国で通用していた古い法律で、国際法です。その後、ローマ帝国がなくなって、ヨーロッパはバラバラに分かれてしまった。そこで、ローカルな法律がいろいろできたのです。フランスやドイツの地域にローカルな法律がいっぱいあって、勝手にやっていたわけです。
(つまり)ローマ法は普遍法で、ローマ帝国全体の法律だったのですが、使われなくなった。ヨーロッパはバラバラになってしまって、各地のローカルな法律を使っていたということです。
ヨーロッパではだんだんと経済が発達して商取引をしたりして、あちらこちらにいろんな人が行き来をするようになったのだけれど、このとき、ローカルな法律では交流ができない。(そうなると、)国際貿易をするときに契約をどのように結びましょうとか、紛争が起こったらどのように裁判しましょうということになるけれど、適当な法律がない。聖書に何も書いていない。
そこで誰かが、そういえばローマ法があったから、ローマ法にすれば公平ではないかということに気がついた。それで、中世のルネサンス期の中ごろにローマ法がブームになったのです。でも専門家が足りない。そこで法学部を作って、ローマ法の専門家を養成するということが始まったわけです。これが大学の起源です。神学、医学と法律ですね。残った哲学は残余概念だから、その3つに入らない...