「問題は自分の人生である」――AI時代における学びの本質は「自分の人生をいかに膨らませるか」という点にある。そのためにも、スマホ検索で即座に答えを得る行為とは対照的に、先人の思考の軌跡を一行ずつたどるような能動的なプロセスが重要である。生成AIは情報を処理するが、人間のような感情や責任、葛藤といった「現実」を持たない。AIに丸投げすれば、自分の頭がスカスカになり、人生そのものがスカスカになってしまう可能性が高い。自分の人生を磨き上げるためのリベラルアーツほど素晴らしいものが他にあるだろうか。(全7話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●自分の人生が問題――自分のために磨くリベラルアーツ
―― そうなってきますと、個々人によって違うということと、個々人の人生をいかに充実させるかというところではありますけれど、先ほど、例えばスマホで写真を撮って調べるのと自分で図鑑で調べるのとでは、頭の定着率が違うという話もありました。それこそ今、生成AIも含めていろんな情報が山ほどある中ではありますから、そういう中で、新しいリベラルアーツの学び方といいますか、どのように何を学んで、どうやって頭に入れればいいか、ここはどのようにすればよろしいのですか。
橋爪 スマホで昆虫の名前が分かるのと図鑑で調べるのと、どこが違うかという話をまずしましょう。
スマホでカシャと写真を撮ったら、これは「何々虫です」と出てきた。それは、昔どこかの誰かがそのように調べて、その虫にそういう名前をつけましたということを教えてもらっているわけです。(スマホで撮った)本人はノータッチなのです。
(一方、)図鑑を見るのはどうなっているかというと、図鑑は他の虫がいっぱい出ている。そして説明もある。「羽の色が違いますね」とか、「形が違いますね」とか、「生態が違いますね」とか、そういうことが書いてあって、だから「こういう名前がついてこうなんですよ」と(教えてくれる)。それは、図鑑を書いた人が昆虫好きなので、昆虫のことを研究しているので、その一端を教えてくれている。だから、そこに書いた人と読んだ人との人間関係が生まれているのです。
―― なるほど。
だから、読んだときには、図鑑の世界の中に入っている。その図鑑を書いた人の世界に近づいているわけです。
―― ですから、その背景情報も含めて、広くその世界を知った上で、初めてその虫の名前が分かるというようなイメージですね。
橋爪 はい。例えば中学で、先ほどの二等辺三角形の両底角は等しいことを証明するというのは、その証明を見ていれば分かります。試験に出たら証明できるようになります。それは、カシャっとして「両底角、等しいです」「証明はこうです」というのと、自分で鉛筆で一行一行書いていくのとではやはり違うので、一行一行書いていけば、ユークリッドと同じことをしているのです。それが大事。
さて昆虫の話です。どこかの誰かが昆虫のことを調べているのですけれど、新種を見つけるわけです。「これは今まで(に...