ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす
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治さないと治る!?オープンダイアローグは逆説でできている
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(6)オープンダイアローグと過程の重視
斎藤環(つくばダイアローグハウス院長/筑波大学名誉教授)
「治そうとしないことで治る」――そんな驚きの逆説に満ちたケア技法が近年、注目を集める「オープンダイアローグ」である。従来の常識を覆し、薬や入院に頼らず、素朴な対話だけで回復をもたらすアプローチのことだが、特に重要なのは「ゴールではなく過程(プロセス)を徹底して重視する」ことだ。そのさいに大事になるのが「不確実性の耐性」である。それによって回復が起こるというが、いったいどういうことなのか。「変われば変わるほど変わらない」など、対話の場に潜む不思議な力と治療のメカニズムに迫る。(全7話中第6話)
時間:11分29秒
収録日:2025年12月8日
追加日:2026年6月29日
≪全文≫

●「プロセスに依拠しなさい」――オープンダイアローグの特徴


 ここからオープンダイアローグについてお話しします。簡単に説明しておきますと、フィンランドの西ラップランドで生まれた、統合失調症の(ための)ケア技法であり、サービス提供システムであり、ケアの思想でもあるアプローチです。

 対話実践のみで精神病が治る、(つまり)薬を使わない、入院治療を使わない、そうして精神病が治ってしまうということで、これは従来の教科書に書いてあるように統合失調症だけはカウンセリングが無効であって薬剤が絶対必要というような記述があるのですけれど、これをひっくり返すような事実が(オープンダイアローグには)あったわけです。

 やっていることを見てみますと、本当に素朴に対話しているのです。もちろんクライアントの尊厳とか主体性を最大限に尊重した対話なのですけれど、すごく普通の対話をしています。なぜそれで回復するのだろうと不思議に思うくらい当たり前の対話をしているのです。

 ただ、その実践が有効なことは明らかなので、今、私も日本に(オープンダイアローグを本格的に)導入しようと努めているところです。日本でやってみても非常に有効でしたから、大いに希望を持てるのです。その有効性を考えるにあたって、否定神学の構造は利用できると私は考えています。

 オープンダイアローグはラカンと違って、結果よりも過程、つまりゴールよりもプロセスに注目します。対話がケア治療として機能するのはあくまでプロセスとして機能するからだということです。つまり、治癒というゴールを目指すゴールオリエンテッドではなく、(過程を重視する)プロセスオリエンテッドであるというところが特徴です。

 対話実践は目標設定をしません。プランも立てません。評価もしません。目の前で展開している過程が全てですので、その過程のみに注目することになります。

 対話で起こっていることは、言語を使って起こるプロセスです。このプロセスにおいて、繰り返しますが、否定神学的な構造が役に立っていると私は考えています。

 オープンダイアローグの理論的提唱者にヤーコ・セイックラさんという人がいます。日本で最初にセイックラさんのトレー...

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