ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす
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なぜ「いないいないばあ遊び」は大事か?乳児の言語獲得と象徴界
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(3)象徴界と想像界と現実界
斎藤環(つくばダイアローグハウス院長/筑波大学名誉教授)
ラカンの精神分析を読み解く上で避けて通れないのが、象徴界と想像界と現実界と呼ばれる「三つの界」である。人間を人間たらしめる言語システムである象徴界、鏡像への同一化から始まるイメージの世界としての想像界、そして決して人間が触れることのできない不可能な領域である現実界――。第3話では、これら「三つの界」についての講義となるが、中でも象徴界は、フロイトが注目した「Fort-Da(フォルト・ダ)遊び」の逸話を交えながら、言葉の獲得と精神安定の深い結びつきについて解説していく。難解なラカン理論が少しずつ身近に、そして立体的に見えてくる。(全7話中第3話)
時間:8分37秒
収録日:2025年12月8日
追加日:2026年6月16日
≪全文≫

●象徴界――無意味な音の連鎖、人間は象徴の動物


 ここからラカンの概念でやや難解といわれる三つの界、象徴界と想像界と現実界についてお話ししていこうと思います。これは、一回覚えるとわりと便利な概念ですので、ぜひご理解いただきたいと思います。

 簡単にいえば、象徴界は言語システムを意味しています。想像界はまさにイメージの世界(視覚イメージの世界)で、ナルシシズムの領域でもあります。現実界は不可能の領域ですね。つまり、人間は絶対に触れることができない領域のことを現実界といっています。ラカンは人間の認識野にはこの三つの界の区別があるということを提唱したわけです。

 ラカンが独自に発明したのが現実界という概念なのですけれど、比重が大きいのは象徴界であろうと思われます。なぜかというと、これは言語システムとイコールだからです。言語といっても、これは意味のある言語とは違っていて、無意味な音の連鎖――「シニフィアン」――それが象徴界の本質であるとラカンは考えました。つまり、意味の連鎖ではないのです。どちらかというと、音の連鎖なのです。言語の音韻的な側面、言い換えれば、意味やイメージではないほうの側面を重視したのです。この作用は人間全般に及んでいます。(象徴界の本質は)言語システムですから。無意識もこの象徴界とかなり重なっています。

 エディプス期を経験した子どもは、言葉を操る存在、すなわち語る存在としてこの象徴界に参加するのですけれど、ラカンにとっては、これが「人間になる」ということを意味しています。ラカンの場合は、喋れなければ人間扱いされないのです。

 象徴界の参加にはいろんな意味があります。単純に社会の参加という意味もあれば性的存在になるという意味でもあります。分かりにくいと思うのですけれど、先ほど私は「言語の根源にはファルスがある」と言いました。ファルスは当然ペニスです。要するに、言葉の根源には男性器があると。つまり、ラカンはセクシュアリティが言語の根源にあると想定したわけです。これは、いかに人間にとってセクシュアリティが本質かということを意味しています。人類はだいぶ進歩したように見えますけれど、どれだけ進歩しても性的スキャンダルで地位を失う人は減りません。いかに人間にとって性、つまりセクシュアリティが本質的かということ...

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