ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす
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タブーを犯したい欲望…エディプス・コンプレックスとは?
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(2)エディプス・コンプレックスと自我
斎藤環(つくばダイアローグハウス院長/筑波大学名誉教授)
人間はなぜ「現実にはない世界」を空想し、漫画のキャラクターに自分を投影できるのか。その答えは「鏡像段階」にあるという。鏡像段階とは乳児期に経験する、鏡に映った自己像を自分と思い込むプロセスのことで、鏡像は左右反転している、つまり偽物の像だが、それを自分と同一化するという意味である。第2話では、ラカン精神分析の核心である鏡像段階の仕組みを皮切りに、言語や象徴を操る起源となった「エディプス・コンプレックス」、そして鏡像段階で得られる「自我」の正体について解説する。(全7話中第2話)
時間:10分02秒
収録日:2025年12月8日
追加日:2026年6月15日
≪全文≫

●鏡像段階と自己愛の起源――鏡に映った偽物を自分と同一化


 ラカンはそういったフロイトの説に基づき、いろいろな概念を提唱しましたけれど、(その中でも)「鏡像段階」が一番有名です。おそらくこれが一番分かりやすい概念なので、ここだけでもしっかりと理解していただければ幸いです。

 簡単にいいますと、ラカンは、生まれて間もない人間には(総合的な)身体感覚がないと考えていたわけです。自分の体がまとまった一つの身体であるという感覚を持てない。みんな感覚がバラバラ。要するに、寸断された身体、(あるいは)身体バラバラの状態であるというイメージを持っている。これは動物と違って、人間だからなのです。動物の場合は生まれながらにして統合的な身体感覚があるとされていますけれど、人間の場合はそれがない。人間は、バラバラの身体という幻想をしばしば夢に見るわけですけれど、これはその名残だといわれています。

 ところが、子どもは生後6か月から18か月の間に鏡に映った自分の姿を見るわけですけれど、それに異常な関心を向けるのです。子どもはそれが自分の映像であることを知って小躍りして喜ぶ、とラカンは言ったわけですけれど、大事なことは、このときにお母さんが後ろにいて「そう、それはお前(あなた)だよ」と保証してあげる、承認してあげること。これによって、この映像は自分のものだというイメージ(感覚)が育まれるわけです。

 動物は、先ほど言いましたように、生まれながらにして統一的な身体感覚を本能的に持っているけれど、人間にはそれがないので、鏡を通して、(つまり)視覚を通して、自分の統一感を理解するという、少しややこしいプロセスを経るとされています。

 そのイメージを持つことは大きな喜びなのですけれど、子どもは「自分が自分であるためには鏡のような幻想の力を借りなければいけない」という意味で非常に大きな負債を背負ってしまいます。なぜならば、鏡に映った(自分、つまり)鏡像は左右反転しています。つまり偽物なのですね。偽物のイメージを自分だと思い込む。これを精神分析では、「主体は自我を鏡像の中に疎外する」といいます。本来の自分を捨てて、鏡に映った偽物の自分の像に同一化するという意味です。

 これはいろいろな制約をもたらすのですけれど、大いなる可能性も開いていくという...

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