ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす
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ダブルバインドとは?ベイトソンの学習理論から解き明かす
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(7)ベイトソンの学習理論とコンテクスト
斎藤環(つくばダイアローグハウス院長/筑波大学名誉教授)
文化人類学者ベイトソンの学習理論から、なぜ人の心は深く悩み、時に「小さな真理」という名の思い込みに囚われてしまうのかをひも解く最終話。対人恐怖や統合失調症などの精神症状とも深く関わる、染みついた「学習の文脈=コンテクスト」。これを事実やエビデンスによる説得ではなく、いかにして揺さぶり、解きほぐしていくのか。その鍵となるのがオープンダイアローグで、対話実践が有効なのだ。そこに治療者とクライアント(患者)が双方向に変化していく、安心で安全な「回復のプロセス」の真髄がある。(全7話中第7話)
時間:8分25秒
収録日:2025年12月8日
追加日:2026年6月30日
≪全文≫

●ベイトソンの学習理論とダブルバインド


 そろそろ終わりですけれど、ここで、いきなりベイトソンという人の学習理論を紹介したいと思います。

 ベイトソンは文化人類学者ですが、いわゆるダブルバインド理論で有名な人です。ダブルバインド理論の背景にあるのは学習理論です。簡単に説明しますと、学習1は、いわゆる条件反射のことで、パブロフの犬(の実験がこれに当たります)。ベルを鳴らして肉をあげると(いうことにすると、そのとき)犬はよだれを垂らす。これを繰り返していくと、犬はだんだんと(ベルが鳴ると肉がもらえることを理解して、)ベルの音だけでよだれを垂らし始める、ということです。これは条件付けの一番シンプルな例で、学習1といいます。

 学習2は、学習1の進行プロセス上の変化といわれていますが、簡単にいうと、学習の文脈(コンテクスト)を理解することです。例えば、先ほど例に出したパブロフの犬は、これが実験だというコンテクストを理解した上で反応していたと考える。(つまり)、より上位の、メタレベルの理解のことを「学習2」と呼んでいるのです。今がどういうシチュエーションの中で起こってくるかということに対する反応と、その反応と刺激との関係を理解することが学習2です。

 学習3は、そのコンテクストのさらにメタレベルの理解のことです。比喩的にいうと、逆学習、つまり、一旦学んだことを一回忘れさせるための学習なのですけれど、これができるのが学習3のレベルと考えられています。つまり獲得された学習2を一回解除するということです。それが学習3の一つです。

 学習4は、もはや進化のレベルに入るので人間には誰もできないとベイトソンは言っています。

 ダブルバインドは、メッセージとメタメッセージが矛盾していて、矛盾に対処できなかった場合に、そのクライアントが一気にメタに飛ぼうとして失敗するということです。

 例でいうと、(ある場所に)面会に来た親御さん(お母さん)から、「あなたのことを愛してる」と言われながらも、ハグをしようとすると拒否される、ということがあったわけです。ハグの拒否はノンバーバルコミュニケーションで、メタメッセージです。「愛してる」という言葉はメッセージです。「愛してる」というメッセージと、ハグの拒否というメタメッセージが矛盾しているわけです...

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