わが国の防衛法制の変遷
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「湾岸戦争のトラウマ」から日本は自衛隊のPKO参加へ
わが国の防衛法制の変遷(2)冷戦後の不安定な平和の時代
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
ベルリンの壁崩壊とともに米ソ冷戦期は終結へ。しかし、それは「不安定な平和の時代」の訪れを意味し、わが国の防衛法制にも大きな影響をもたらした。その第一のきっかけは湾岸戦争。「湾岸のトラウマ」と言われるその事態は一体どのようなもので、何を日本の安保体制にもたらしたのか? 前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏が語る。(全4話中第2話目)
時間:9分50秒
収録日:2014年9月24日
追加日:2015年5月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●冷戦終結により訪れたのは「不安定な平和の時代」


 冷戦は、ベルリンの壁が崩壊することによって、1989年に終結します。これは、共産主義対自由主義という戦いが、自由主義の勝利により、東西陣営のうちの片一方が倒れるということで、冷戦期当時の米ソという二つの大国、これを極と言いますが、いわゆる双極構造が解消され、世界的に一種の安定的な戦略環境が終わりを告げたのです。

 すなわち、それまでわが国の安全保障を支えてきた、自国を守ること、周辺を安定させること、そして、世界の秩序を維持すること、という三つのレベルの同一性も同時に解消された、ということです。

 当初、これで世界的に平和が訪れる、あるいは、フランシス・フクヤマ氏が言ったように、「歴史の終焉、すなわち、イデオロギーの闘争が終わったのだ。自由主義の勝利に終わったのだ」と世界中が浮かれる中で、実際に冷戦後に訪れた時代は、「不安定な平和の時代」でした。


●安保政策、防衛法制の問題が顕在化-第一段階は湾岸戦争


 この時代において、わが国の安全保障政策と防衛法制は、冷戦期において潜在化していたさまざまな問題に直面し、情勢適応の原則に従って変化を遂げることとなりました。この変化は、同じく北岡伸一教授の分析を借りれば、三段階に区分できます。

 第一段階は、1990年の湾岸危機、湾岸戦争によって始まりました。この事態は、日本にとって極めて重要な地域で、冷戦後の国際秩序に真っ向からの挑戦が生起したにもかかわらず、日本は資金提供以外さしたる役割を果たすことができませんでした。

 私にとっては自分の経験なのですが、聞かれている方の中には、「もう完全に歴史の問題だな」と思っている方もおられるかと思いますので、少し細かく説明します。

 冷戦下においては、ある種いろいろな宗教や従来からの民族、地域などの紛争が、エスカレーションしていくと、最終的に米ソの核の戦いになってしまうというところから、その全てが顕在化しないようになっていたわけなのですが、冷戦が終わりまして、そういったものがどんどん顕在化してくることになります。

 その端緒となりましたのが、1990年8月、フセイン政権のイラクによる突然のクウェート侵攻です。1991年1月には多国籍軍が編成され、砂漠の嵐作戦が開始されました。いわゆる、湾岸戦争が勃発したのです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析
史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀