わが国の防衛法制の変遷
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
テポドンや不審船事案による脅威から有事法制成立の動きへ
わが国の防衛法制の変遷(3)北朝鮮危機から9.11へ
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
冷戦終結以後の日本の安全保障政策は、3段階で行われた。通常なら自国→周辺→世界へと広がっていくはずの防衛法制が、日本では、世界の国際秩序→周辺地域の安定→自国の安全確保と、逆にフォーカスした。その動きにこそ、日本と安全保障の問題点が潜んでいると、前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏は見ている。(全4話中第3話目)
時間:17分10秒
収録日:2014年9月24日
追加日:2015年6月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●安全保障政策と防衛法制変化の第2段階は、北朝鮮危機から


 冷戦後のわが国の安全保障政策と防衛法制における変化の第2段階は、1994年の北朝鮮危機によって始まりました。北朝鮮の核開発疑惑に端を発した危機は、米国を中心とする国際社会が北朝鮮に対する経済制裁発動の動きを見せ、北朝鮮がこれに戦争で応じることを示唆したため、事態は極度に緊迫しました。

 湾岸危機が何と言っても遠く離れた中東で起きたことに比べれば、これは日本に対する直接的な脅威でしたが、当時のわが国にはほとんど準備がありませんでした。

 具体的には、朝鮮半島の有事=戦争状態になることに伴って生起する事態への備えです。韓国には平均1万人の邦人が短期・長期に及ぶ滞在をしていますが、彼らをどうやって救出すればいいのか。あるいは、戦争により生起する朝鮮半島からの大量の避難民に対する活動はどうするのか。あるいは、当然のことながら、日米安保条約に基づいて朝鮮半島における武力紛争当事国となる米国は日本の基地を使用するわけですが、その米国への支援はどう行うのか。さらに北朝鮮に対して、経済制裁の実効性を確保するためには船舶検査などの活動も必要になってきます。

 しかし、このような朝鮮半島での有事の際に当然必要になる事案に対する準備は、全くできていなかったのです。


●緊急事態への対応策を「薄皮1枚」までに詰めた橋本政権


 こうした教訓によって、日米両国の間で模索されていた冷戦後の日米安保のあり方は、1996年の「日米安全保障共同宣言」、1996年から98年の「日米防衛協力のためのガイドラインの見直し」作業と、この作業に基づく当時の新ガイドラインの策定となり、さらに、国内の防衛法制としては、「周辺事態安全確保法」の制定や、アメリカとの物品役務の相互調達を可能とする「ACSA(Acquisition and Cross―Servicing Agreement)」の改正となりました。

 こうした日米間の作業と同時に、先ほど申し上げたような国内に生起するいろいろな緊急事態に対する対応策の検討も進められました。例えば、在外邦人等の輸送に関する法律の制定です。こうした一連の検討作業において、私は特に後半の、ガイドラインの取りまとめから法の策定までの担当として携わりました。

 当時、橋本龍太郎総理は、われわれ関係者に対してこのように言われました。「これまでわが国の安全保障法...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎