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「場」が選手たちの目標となる

清宮克幸の「監督術」(8)印象深い「場」をつくる

清宮克幸
一般社団法人アザレア・スポーツクラブ 代表理事/公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 副会長
情報・テキスト
ヤマハ発動機ジュビロ監督・清宮克幸氏は、選手にとって重要な要素として「場」の力を挙げている。選手たちの目標となる場を用意するため、会社に大きなプロジェクトを提案した清宮氏。人に力を与える場のあり方を通して語る監督術は、リーダー論としても必見! 清宮氏による「監督術」シリーズ第8回(最終話)。
時間:05:30
収録日:2015/04/09
追加日:2015/08/06
カテゴリー:
≪全文≫

●良いプレーをするには、まず「客観視」


── ずっと以前の著書(『最強のコーチング』・講談社+α新書)ですが、その中で一番気になっている言葉に、「周辺視」という言葉があります。

清宮 今回の決勝戦も同じでしたね。今回は、自分を周辺視というか客観視しようということを、三つほどのキーワードの中の一つにしました。要は、俯瞰するということです。例えば、僕がプレーヤーだったら、ビデオを見て、「おい、おい、清宮は何しているんだ、そんなところで。お前がプレーする場所はここだろう」、あるいはタックルするシーンで、「おい、おい、なんていうタックルしているんだ。そんな格好悪いタックルするな」、というようなことですね。

 それぐらい自分のプレーを余裕を持って感じられたら、自分が居なければいけない場所や、やらなければいけない仕事について判断ができ、いい得点を出せるのではないかと思うのです。


●「場」が選手の目標となる


清宮 そういう動いている中での場と、もう一つ、定点としての場があります。例えば、決勝戦という場もそうですが、ヤマハにはホームゲームという場があり、ファンが一番多い試合ですから、ホームゲームのスターティングになりたいという思いがあります。特に、初ホームゲームのスターティングメンバーになりたいというのは、やはり場として成り立っているということです。

── 役割とか、何か象徴的なものがあったりする、ステージのような場ですか。

清宮 ステージですね。だから、そこを目標とする選手たちが出てきます。

── 場がセレモニー的な意味を持ってくるということですね。

清宮 そうですね。セレクションに勝った人間がその場に立てるということです。

── そういうことを意識付けするように、場を演出することを考えておられるのですか。

清宮 そうです。演出ですね。


●選手の士気を上げる「満員プロジェクト」


── そういったストーリー的なものを清宮さんがお持ちで、一人一人の選手の場面といったものを先回りしてつくる感じなのでしょうか。

清宮 例えば、ホームゲームであれば、選手たちは「あ、ホームだよ。絶対出たい」「出場してその場に立ちたい」「勝って皆に喜んでもらいたい」「騒ぎたい」というようなことを、当たり前のように思うではないですか。でも、もしホームゲームで1000人とか2000人しかお客さんが入っていなかったら、そんなことも思わないわけです。

── そう考えると、前回の秩父宮ラグビー場の話(聖地だったラグビー場が解体され新しくできるまで10年ほどかかる可能性がある)は、結構衝撃的なものですね。

清宮 大きいのですよ。

── そういう意味での場というか、聖地ですよね。

清宮 ですから、僕は、普段それほど会社にお願いはしないのですが、監督としての1年目に「スタンドを満員にしてください」というお願いをしたのです。これは、もう絶対に選手たちの目標になるし、将来いずれ勝ったときには、「ヤマハのスタンドがいつも満員で勝てました」と言えると思ったからです。

 そこで、1年目に「満員プロジェクト」を立ち上げてもらったのです。結果、2年間ぐらいそのプロジェクトを続けたのですが、満員にはならなかったのです。使ったお金は、1億円を超えたりしていますが、それだけお金を使っても満員にできなかったのです。

 でも、来シーズンは、日本一を取ったチームのホーム開幕ゲームというニュースバリューがありますから・・・。
  
── そこは、かなり重要視している場なのですね。

清宮 はい、非常に重要視しています。

── 大事なのは「場」なのですね。

清宮 「お前ら、勝ったら違うだろ。勝ったらホームゲームが満員になるんだ。1億円使っても満員にならなかったスタジアムが満員になるんだ」ということです。1億というのは比喩なのですが、やはりそれは結局、チームの力になって返ってくるのですよね。

── 小さい場もあるけれども、そういう大きなステージとして選手たちの士気を上げたりすることもあるわけですね。

清宮 監督はそういうこともできるのではないかという思いはありますね。
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