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清宮克幸の「監督術」(1)現有戦力を財産とする

清宮克幸
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 副会長
概要・テキスト
2015年2月28日、ラグビー日本選手権決勝に勝利したヤマハ発動機ジュビロは、悲願の優勝を手にした。本社の業績不振による支援の縮小、トップリーグ降格の危機のさなかに、チームの監督に就任したのが清宮克幸氏。早稲田大学、サントリーで黄金時代を築いた勝負師に、4年で「日本一」を達成した、その「監督術」を伺った。シリーズ第1回目の今回は、どん底からの出発がテーマだ。
時間:07:48
収録日:2015/04/09
追加日:2015/04/18
カテゴリー:
≪全文≫

●就任1年目から「日本一」を目指していた


── 4年でヤマハ発動機ジュビロ(ヤマハ)を日本一に持って来られました。早稲田大学の時と比べて、うんと難しかったと思われます。何より監督を引き受けられた時は、入替戦に当たっていましたよね。

清宮 そうでしたね。

── そこからどうやって4年で1位にすることができたのか。清宮さんのことですから、おそらく最初から「日本一」とは言われていたと思いますが。

清宮 はい。僕としては、4年かかるとは全く思っておらず、1年目から真面目に「日本一」と言っていました。1年目のシーズンは、80分の試合で「20分間ならば日本一になれるチーム」にはなりました。でも、結果としては8位までしか成長できなかったわけです。

── そこから「何をし、どうやって勝つか」という、清宮さんのすごい戦略づくりが始まるわけですね。4年前のヤマハというチームを見ると、必ずしも素材的にスター選手が集まったチームではありませんでした。前年に会社側がラグビーの強化を縮小した影響もあったのでしょうね。

清宮 そうですね。レギュラー選手が10人弱、他チームに移籍しました。


●苦闘の1年を、チームの財産として生かす


── 一見、チームがガタガタになってしまった状態ですよね。そんな中、選手の気持ちをつかみ上げ、「日本一にするぞ」とおっしゃる。そのあたりがすごいところだと思います。

清宮 ただ、チームには財産がありました。厳しい中で残った人間たちだけで1年間耐え忍んだことです。この財産はすごく大きかったと思うのです。残った人間で入替戦を戦い、ギリギリではあったけれども2点差で逃げ切りました。そんな苦しいシーズンを1年耐えたのです。僕は、そのことを翌年からうまく利用しようと思ったのです。

 つまり、あまりにも苦しい1年だったため、1勝しただけでまるで優勝したように喜ぶのです。逆もそうで、普通のチームは負けても結構淡々としていますが、うちのチームは負けるとシーズンが終わってしまったかのように落ち込むのです。その年、そんなチームはヤマハだけでした。「これは生かせるな」と、外から見ていて思いました。ですから、これを生かすためにはどうするかというと、同じメンバーのままで結果を変えることだと思ったのです。

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