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2019年ラグビーW杯の監督は日本人で

清宮克幸の「監督術」(5)選手たちを染めていく

清宮克幸
一般社団法人アザレア・スポーツクラブ 代表理事/公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 副会長
情報・テキスト
ヤマハ発動機ジュビロを日本選手権優勝に導いた清宮克幸氏に、今後目指すヤマハスタイルについて聞いてみた。キーワードは「染める」だ。監督は選手の意識をどう染めていこうとしているのか。清宮氏による「監督術」シリーズ第5回。
時間:07:02
収録日:2015/04/09
追加日:2015/07/16
カテゴリー:
≪全文≫

●ディフェンスが追い付くまで2年かかる


── 早稲田大学ラグビー部監督の時も、清宮さんが入って1年目、2年目と優勝して、その後、清宮さんの遺伝子を擦り込んでいきますよね。清宮時代の余力で早稲田の力はしばらく保たれていたと思います。今回も、まさに優勝した後、やろうと考えているのは、そういうことですか。

清宮 ラグビーという競技は、歴史的に大体アタックが先に行くのです。それをディフェンスが追い掛けていくのです。今のヤマハのラグビーのスタイルに、ディフェンスが追い付くまでに、あと2年ぐらいかかると思うのです。

── ディフェンスが追い付くのに、あと2年くらいかかるのですか。

清宮 ですから、例えば、サントリーが、3年前にトップリーグも日本選手権も全部勝って、黄金時代が来ましたけれど、あの時のサントリーも、アタックが先に行って、ディフェンスは2年かけて追い付いてきたのです。ディフェンスがアタックを超えた瞬間に、サントリーのアタックはもう終わりという感じになりました。時間の流れというのは、そういうイメージなのです。ヤマハも今のスタイルであと1年、2年は強さが続くでしょうが、ディフェンスが追い付いてきたときに、さらに新しく変化するスタイルを身に付ける感じなのかなと思っています。

── そうすると、2017年あたりがピークになってくるのですね。

清宮 そう思っているのですが、そういうことを選手に言うと、選手は、「清宮さんがあんなことを言っている」と感じるため、結構染めることができるのです。

── やはり、言うことによって染めていくのですね。

清宮 自分の目の前で「お前、イケてるよ」と言われるよりも、人から話が回ってきたり、メディアを通して聞いたりした方がうれしいし、本当だと思うではないですか。

── そうですよね。目の前で言われるよりも、ぐるっと話が回ってきた方が、真剣味が伝わってきますよね。

清宮 ヤマハは、今年1年、オリジナルのヤマハラグビーで勝ったわけですから、今後2年ほど今のスタイルに磨きをかけます。しかし、ピークには限界がありますから、やっているプレーヤーが変わらなければいけません。アタックにディフェンスが追い付いてくると、今度は、中身の選手が変わらないといけないということです。そして、個性がそれを上回ってくると、また新しい組み立てができると思います。


●2019年ワールドカップは日本人監督で


── 2019年はワールドカップですね。日本で初めて開催されます。清宮さん、「ワールドカップの監督は俺だ」と思いますか。

清宮 僕だとは言っていないですよ、一言も。

── でも、多くのファンの人たちは、清宮さんにやってもらいたいと思っています。

清宮 僕というよりも、やはり日本人にやってもらいたいのでしょうね。

── やはり全然違いますよね。

清宮 違うと思います。何のためにやるのか、戦うのか、開催するのかということは、やはり日本人でなければ訴えられないのではないかと思っています。

── その通りだと思いますね。

清宮 日本ラグビーですから。もし今回(2019年)の日本ワールドカップで失敗をしたら、そのつけを背負わされるのは、日本のラグビーを愛する人たちですからね。

── ものすごく重要ですよね、2019年は。

清宮 ただ、試合に勝つか負けるかでなく、大会を成功させるため、そこに至るまでの仕掛けなども、ジャパンというチームの監督として責任があると、僕は思うのです。

── それはすごく大事なことですよね。

清宮 大事です。

── でも、年齢的にも経験的にも、ちょうど清宮さんが一番いいのではないですか。

清宮 われわれの世代と言いますか、学生時代にラグビーのピークを経験している世代が…。

── 早明戦がピークですよね。

清宮 そうですね。その世代が、本当に世の中を動かせる世代になってきているわけです。こんなチャンスはないと思うのです。

── そのときに、その世代でプレーした人が実績を積んで監督に戻ってくるというスタイルがいいですね。

清宮 そう思います。今回の秋のワールドカップで日本代表が結果を残せば、当然、次も同じ監督で、というような話になりますし、現象的にはやはりそれが一番美しい。8年間かけてチームをつくるということですから、一番結果も出るでしょう。ただ、日本ラグビーのためになる仕掛けが、この4年間でしっかりとできるかは、大きな課題となるところですね。

── でも、これまでに、体が小さいからフランスにスクラムだけを勉強しに行ったというお話がありました。やはり日本の土壌と日本人の体に合った日本人の得意技と苦手なところが風土も歴史も違うと分かっていなければ、本当は引き出せないわけですよね。

清宮 そう思...
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