●レスリング練習でヤマハだけの強みを養う
── レスリングを練習に取り入れたのは、何年目からですか。
清宮 あれは、1年目からやっています。
── 1年目からでしたか。身体能力を上げて、接点で強くするという狙いでしょうか。
清宮 そうですね。切り口はスクラムと同じで、やはり他チームにはないヤマハだけの強みを、ディフェンスの中につくりたかったのです。とにかくタックルしてもすぐに起き上がり、しかもダメージを受けずにそれを繰り返すことができるチーム。聞いただけで強そうではないですか。グラウンドに誰も倒れていないということです。背中を着かないことはレスリング選手のプライドではないですか。それをやりきったら、そのスタイルが身に付くだろうと思っていました。それまでも、レスリングの練習をするラグビーのチームはありました。でも、それは3カ月とか半年に1回ぐらいです。それを1週間に2回、毎週やるチームは世界にもないだろうなと思ったので、「これは、やったれ」となったのです。
●チーム変革へ本物の装備とコーチを準備
── レスリングの練習を常態的に持ってくるとは、選手も最初はびっくりされたでしょうね。
清宮 そのためにウエートルームを改造しました。ウエート室にあった機械を半分取っ払い、本物のレスリングマットを敷いたわけです。300万ほど掛かりました。そして、本物のレスリングシューズも発注しておきました。だから、練習スタートの日には、マット、シューズが本物で、教えてくれるコーチはオリンピックの銅メダリストです。もう想像するだけで楽しいではないですか。
── それは楽しいですよね。
清宮 何か中途半端にグラウンドの上でレスリングの真似をしたり、人工芝の上でやるといったことではなく、全部本物ですから、それはもうエキサイティングですよ。
── エキサイティングですよね。それはやはリ、最初からやるのだったら徹底的にやろう、と狙って考えられたのですね。
清宮 もちろん、そうですよ。
── そこで、メダリストまで連れてきて、シューズからマットから全部本物にする。
清宮 はい。それは、やっている選手たちが、「本当にきつい」と胸を張って言えるようにしたかったからです。記者や他チームの人から「どう? レスリングの練習は」と聞かれます。うちの選手たちは皆、「やばい」「もう、ありえへん」と答えていました。そのぐらいやれば変わるのではないかと思って、準備しました。
●日本一の練習量で強い接点をチーム文化に
── 週に2回ですと、1回あたりどのぐらい時間をかけるのですか。
清宮 1セッション、1時間以内です。
── 1セッション。でも、1時間レスリングをやるのはめちゃくちゃきついと思います。
清宮 それは、きついですよ。だから、40分のときもあれば、1時間のときもあります。それを週2回、最初の2年間は全員がやりきりました。
── そうなると、スクラムが強い上に、接点はレスリングで鍛えられて強いということで、ますます違うチームになってくるわけですね。
清宮 そうですね。やはりメンタリティーが違うのではないかと思います。うちの選手たちは、日本中のどこのチームよりもタックルして起き上がってくる動作を数多くやっているわけです。例えば、1日に100回から200回。大げさに言うと、それを1年、54週間やるわけです。年々積み重なっていくと、それがもうチームの当たり前の文化になってくるのです。
今年などは、スケジュールがタイトになってきたため、試合に出た選手たちには少しハード過ぎるので、レスリングの練習をやらなくていいようにコントロールしました。しかし、やはり4年間やってきた財産はちゃんとあったと思います。
── なるほど。もう体に染み付いているわけですね。
●どんな状況でも力を発揮する「ヤマハスタイル」
── バックスについては、プレースキッカーとしてフルバックの五郎丸歩選手がいて、スタンドオフに大田尾竜彦選手、CTBに宮澤正利選手などがいますが、どのように整えていかれましたか。
清宮 バックスについては最初の年から、キーマンとなる選手たちがしっかり結果を出してくれれば、ある程度ものになると思っていました。要するに、タレントはそろっているわけです。ただ、やはりそこに不確定な要素が絡んでくるため、なかなか力が発揮できないのです。相手からのプレッシャーや天候もあれば、試合内容ももちろんあります。そういったことで、なかなかコンスタントに自分たちの強さが出せませんでした。それを3年目のシーズンから今年にかけては、「どんな状況でも自分たちのスタイルを貫こう」と方針転換をしたのです。
── どんなときでも自分たちのスタイルを貫く。
清宮 自分たちの練習した...