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レアメタルの最大のハードルは値段の高さと環境破壊

レアメタルの光と影(3)レアメタルの可能性と課題

岡部徹
東京大学生産技術研究所 所長
情報・テキスト
岡部徹氏によれば、レアメタルに対する世間の関心度は10年前とは雲泥の差だという。その契機は中国のレアアース輸出規制だった。自動車、太陽電池など身近なところで使われるようになったレアメタルだが、メリットばかりではない。25年以上前の京大在籍中にレアメタルに出会って以来、レアメタル研究一筋の岡部氏だからこそ語れる、レアメタルの可能性と課題とは?(2015年4月20日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「レアアースをはじめとするレアメタルの光と影」より、全7話中第3話目)
時間:07:58
収録日:2015/04/20
追加日:2015/08/17
≪全文≫

●京大でレアメタルのとりこに


 以上、チタンの紹介をしましたが、私の自己紹介もさせていただきます。学部生時代は京都大学の熊野寮という所にいました。最近、メディアでも話題になっていましたが、家賃が月300円のスラムのような所で学部時代は生活をしていました。(4年生のときに研究室に配属され)そこでチタンの研究を始めたら面白くなって、それからレアメタルのとりこになりました。

 ただ当時、日本ではレアメタルの研究をやっていても暮らしていけないと言われていたので、学位取得後は、MIT(マサチューセッツ工科大学)に行って、(レアメタルの一つである)タンタルの研究をしました。そうこうしているうちに東北大学から、レアメタルのリサイクルの研究センターを立ち上げるので来てくれないかと言われ、そこに数年間、在籍しました。その後、2001年から東京大学に移りました。研究経歴としては、渡り鳥のような研究者をしていますね。

 私の人生は、引越しばかりでした。引越し歴が20回以上ありましたので、レアメタルがはやらないうちは、「専門は“引越し工学”です」と言っていました。引っ越し20回以上というのは、研究者という職歴だからではなく、父親が国際金融マンだったからです。父は、住友銀行の国際畑で働いていましたので、父親の転勤に伴って、引っ越しばかりしていました。2、3年ごとに転々とし、三つの小学校に通いました。

 今日はレアメタルの鉱山の話もさせていただきますが、アウトドアライフ(野外活動)が大好きなものですから、その辺りの話を鉱山開発と合わせて紹介しようと思います。


●絶滅危惧種ゆえ関係者全てがサポーターに


 レアメタルに関しては、チタン、ニオブ、タンタルなど何でも、その製錬とリサイクルに関する研究をひたすら続けてきました。今は、レアメタルがはやっているので、皆さんから「いい研究をしているね」と言われるのですが、当時は、「岡部さん、そんなことやっていてどうやって食べていくの?」と言われていました。

 ただ、ありがたいのは、このような研究をやっている人間がほとんど居ないので、日本のみならず世界中に居るこの分野の関係者が皆、私のサポーターになってくれることです。そういう意味では、若い人に対しては、「人気のある分野ではなく、誰もやっていないところをやると非常にいいことがあるよ。」と言っています。チタン、ニオブ、タンタルについて語れる人間など、今は絶滅危惧種で、(材料の研究分野の中でも)いつも「オランウータン」のような研究者と言われています。


●需要急増のレアメタルは実に多種多様


 大事なポイントは、今後もレアメタルの需要はどんどん増えるということです。特に自動車関係のレアメタルが重要となります。自動車は今まで鉄の塊で、エンジンブロックはアルミニウム、配線などは銅で、いわゆるベースメタル(汎用金属)で構成されていました。これから自動車がモーター仕掛けになり燃料電池駆動になったら、多量のレアメタルが必要になります。、全ての制御機器は、多種多様のレアメタルを使います。また、ライト(照明)などもガリウムを使ったりして、機能材料としてのレアメタルをどんどん使うようになります。このような状況の中、急にレアメタルの需要が増え始めました。2006年ごろに日本経済新聞の1面角にレアメタルという文字が載りましたので、皆さんはこのころからレアメタルを知るようになったと思います。

 レアメタルは沢山の種類があります。今日はそのことについて詳しく話しませんが、簡単に言いますと、白金、つまりプラチナグループメタル(白金族金属)は資源的に稀少なレアメタルです。インジウム、ガリウムも稀少なのですが、実を言うと(鉱石から抽出せずに)捨てている量の方が多いのです。アルミニウム製錬や亜鉛製錬では、(鉱石中に共存する)インジウムやガリウムは抽出せずに、ほとんど捨てています。他には、タンタルのような紛争鉱物(紛争地域で産出される鉱物資源のこと)もあります。それから、皆さんのお手元にあるチタンは、資源としては無尽蔵で、(地殻中で)9番目に多い元素です。アルミニウムは金属になるまで、昔は、相当な時間がかかりましたけれど、チタンは今でも金属にするのに時間と手間がもっとかかっています。


●中国の輸出規制で関心高まったレアアース


 私が忙しくなってきたのは2007年あたりからで、NHKの「クローズアップ現代」にコメンテータとして出演したりと、メディアでもいろいろ活動してきました。また、私自身はBS放送を自宅で見られないのですが、小宮山宏先生(株式会社三菱総合研究所理事長・東京大学第28代総長)に呼ばれてBSフジの「プライムニュース」の生放送に出演してコメントしたこともあります。なぜこ...
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