●世界最大鉱山、中国の包頭に潜入捜査へ
レアアースに関しては、資源供給制約ではなく、むしろ、技術制約、環境制約の方が重要な課題であるとについて、具体的な事例をご紹介しようと思います。
インターネットで「包頭(バオトウ)」、「テーリングダム」で(英語で画像)検索すると、かなりショッキングな映像が出てきます。これらの映像を見ると、レアアースを採掘、製錬するに当たって、すさまじい環境破壊が行われているということがわかり、“このような環境破壊を許していいのか”と、一部の人たちはメディアで語っています。
このような映像をネット上で見つけた岡部徹は、アウトドアライフが大好きですので、さっそくこの鉱山(と周辺地域)に行ってみました。ただ、ここは日本人だけではなく、外国人が入るのに制限が多い地域でした。中国の北京から包頭まで飛行機で飛んで、そこから北へ120キロほど行きます。モンゴルの国境に程近く、何もない所です。Googleで見ると、巨大な世界最大のレアアースの露天掘り鉱山があることが分かります。
内モンゴル自治区の包頭市は100万人の巨大都市ですが、郊外は、かなり田舎です。何もない包頭市の郊外に、私は出かけていきました。普通、都会人はこういう何もない所が嫌いなのですが、(自然が大好きな)私はハッピーになってしまうのです。まず人工物がなく、遮るものもありません。遮るものといったら、たまに居る牛や羊などの動物くらいです。また、なぜか分かりませんが、道中の郊外には風力発電機がやたらとあり、この電気はいったいどこに使うのだろうと思ったほどです。この地域は中国の行政区内にありますが、生活は完全にモンゴル文化圏です。
●素晴らしいもてなしの後、レアアースの町へ
いざ行ってみたら、現地の方々から素晴らしいもてなしを受けました。なぜかというと、外国人の専門家はあまり来ないからです。私を連れて行ってくれた中国のレアアース関係企業の親分が、「俺の友だからちゃんとしてくれ」と言ったものですから、ものすごいことになるのです。桁違いのもてなしで大変でした。昼間から濃い酒を飲みまくり、贅沢な宴会が続きます。私はお酒は得意な方ですが、食べ物の方は文化の違いが大きく、結構つらいこともありました。
昔、中国に行った方の中には現地のトイレで困った経験があると思います。最近は、北京などの都会では、日本のような(個室の)トイレが多くなり、全く困ることはありませんが、包頭の郊外では今も昔と同じです。現地でのトイレは、男と女には大きく分けられていますが、便所には個別の仕切りが全くありません。仕切りが無く、とてもシンプルなトイレでは、皆、用を足しながら普通にいろいろな会話をします。コミュニケーションを大事にしているのです。
レアアースで多くの富を生んだ町も訪問しました。
●中国で製錬するのはごみ捨て場があるから
鉱山の近くには、レアアースを採掘したときに出る廃棄物の処分場である尾鉱処分場があります。この写真は、作業用の巨大なトラックです。ここは、結構岩盤が固いので、鉱体に穴を開けてダイナマイトを仕掛け、ボーンと爆発させてから鉱石を粉砕して採掘します。回収すると、その中にレアアースが入っているのです。
レアアースだけならいいのですが、問題なのは、レアアースの鉱石にはウランやトリウムといった放射性物質が含まれていることです。この鉱石からレアアースを抽出したら、同時に放射性物質を含んだ廃棄物が発生します。仮に、タダでもいいからと言われて日本にレアアース鉱石を持って行っても、日本では、ご存知のように溶媒抽出の技術はあっても製錬はできません。なぜならば、日本では廃棄物の処理に関する環境規制が厳格で、(放射性物質を含む廃棄物の)低コストの処分場がないからです。ですから、日本では(鉱石を用いた)製錬はできず、結局、(鉱石を用いた製錬は)全部、中国に依存することになるわけです。
●テーリングダムは何でもありのごみ捨て場
中国のごみ捨て場はどのようになっているのだろうと思ったので、包頭市郊外にある、有名なテーリングダム(廃棄物処分場)も訪問しました。本当に、処分場では酸などを無制限に流してやっているのかなと気になったものですから。(メディアを介して報道される)暴動などのショッキングな映像でも何でもそうですが、全体感が無いままショッキングなところだけ見ても誤解しますので、正確な状況の掌握や情報の認識には注意を要します。そこで、話題になっている廃棄物処分場を探し出したら、包頭から西に10キロの所にあるということが分かりましたので、行ってみました。
入口に「尾鉱重地」と書いてありますが、要は「鉱石の残りものをダンピングする所」ということです。私た...