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DATE/ 2017.08.17

職場から帰りたくない…帰宅恐怖症とは?

「プレミアムフライデー」の現実味のなさ

 2017年に生まれた言葉で、本来の目的と現実が大きくかけ離れたもの――その代表格と言えば「プレミアムフライデー」ではないでしょうか。政府と経済団体連合会によって2017年2月から月末の金曜日は「15時退社」をするという“働き方改革”を打ち出しました。公式サイトには「月末金曜は、少し早めに仕事を終えて、ちょっと豊かな週末を楽しみませんか?」と記して“週休2.5日”を推奨。旅行やスポーツなどを楽しんでほしいとしています。

 しかし、長時間労働が常態化している日本において、急に「プレミアムフライデー」の理念を取り入れようとするのは無理があったようです。ウェブメディア「ITmediaビジネスオンライン」によると、カルチュア・コンビニエンス・クラブ調べの「プレミアムフライデー」を導入した企業の割合は、わずか3.4%という低さになっています。プレミアムフライデーが定着しない理由として、長時間労働にプラスして“早い時間に帰ってもOKな職場の雰囲気か”、“仕事以外の時間の余暇をどう使うか”という点にもあります。

その象徴として捉えられている言葉が「帰宅恐怖症」です。

「帰宅恐怖症」になりやすいのは一見「いい夫」タイプ

 「ベリーベスト法律事務所」が運営するサイト「LEAGAL MALL」では、帰宅恐怖症について「仕事が終わっても家に帰りたくない、同僚と飲むわけでもなく、一人でネットカフェ等で時間をつぶして、家族が寝静まった後でないと家に帰れない、ひいてはカプセルホテルに泊まってそこから出勤する」と例示しています。つまり、本来一番安らげるはずの家庭が、安らげる場所にならずに敬遠しているという矛盾が生じているのです。

 同サイトでは、帰宅恐怖症に陥りやすい夫のタイプについて紹介しており、妻が子どもにばかり関心を向けて、夫に関心を向けないなど、プライベートでも自らに関心を向けてくれないことで知らず知らずのうちに傷つくケースがあるとしています。また「真面目で温厚、争い事が嫌い」という一見「いい夫」タイプが帰宅恐怖症に陥りやすいことも指摘しています。

 また、「帰宅恐怖症」というタイトルで文春新書から出版されている新書では、仕事が終わっても家庭などプライベートな部分に煩わしさを感じる部分について触れられています。ウェブサイト「文春オンライン」では「帰宅恐怖症チェックポイント」として、「妻はコントロールしたがる傾向がある」「妻の顔色をうかがったり、ご機嫌とりをしてしまう」「妻が寝静まった頃に帰ろうとする」など10項目を挙げていますので、疑わしいと感じたらチェックしてみるといいかもしれません。

プライベートの時間まで仕事はあり得ない?

 定時で帰れないのは家族を持つ社会人だけでなく、20代の若手社員も同じこと。ウェブサイト「マイナビウーマン」では『定時で「帰れる人」と「帰れない人」のちがい5つ』を掲載。その要素として定時中までに「仕事ができるか」、「優先順位を受けているか」、「計画性があるか」、「段取りがいいか」、そして「帰る気があるかどうか」も挙げています。ここでの「帰る気」とは定時までに終わらせることを示していますが、人によっては「帰りづらい」という感覚もあるのではないでしょうか。

 ウェブサイト「サイボウズ式」でも『定時後の「帰りにくい空気」とどう向き合うか』とのタイトルで紹介。『「プライベートの時間まで仕事をするなんてありえない」という価値観をチーム内に浸透させること』が大事だとしています。

 ただし前述した「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」のアンケートでは、もしプレミアムフライデーを使用できる立場になった場合、何がしたいかとの質問に対してトップは「家でゆっくり過ごす」の58.5%と、過半数の人が「のんびりする」ことを選んでいます。逆に言えば「何かをしたい!」という積極的な姿勢を持っているわけではなさそうです。

 ありきたりの答えかもしれませんが、職場をすぐ出てでもやりたい趣味があるかどうか。それを働く人それぞれが見出すことが、「帰宅恐怖症」の改善であることは間違いありません。

<参考文献・参考サイト>
・『帰宅恐怖症』(小林美智子 著、文春新書)
・SHARP公式ツイッター
https://twitter.com/SHARP_JP/status/890735411928064002
・文春オンライン
http://bunshun.jp/articles/-/2766
・プレミアムフライデー公式サイト
https://premium-friday.com/
・LEGAL MALL:帰宅恐怖症
http://best-legal.jp/family-phobia-5042
・サイボウズ式:定時後の「帰りにくい空気」とどう向き合うか
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001013.html
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