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DATE/ 2017.03.11
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ビジネスパーソンが貞観政要から学ぶべきこと

●「失敗の研究」の書・『貞観政要』


 『貞観政要』は中国唐代に編まれた皇帝・太宗の言行録です。歴史上の失敗を教訓として治世に生かすために、多くの示唆に富んだ皇帝と優秀な側近たちとの会話が収められているいわば「失敗の研究」の書。現代の中国の政治家のなかにも、長期政権をいかに築くかを学ぶためにこの『貞観政要』を読了している人が少なくないそうです。

 中国古典に造詣の深い老荘思想研究者・田口佳史氏も、リーダーたるものが読むべき書物として『貞観政要』を重視しています。今回は太宗の側近の一人・魏徴がよくよく心に刻むようにと皇帝に説いた、隋の煬帝の例をご紹介します。

●重要なのは、自分の方法を客観的にみること


 隋は当時、「永久不変に続いていくだろう」と誰もが疑わなかったほどの大帝国でした。皇帝ももちろん、帝国の滅亡などは望んではいなかったのですが、安定的に維持されているものを非常に軽視してしまうところがあり、国を強くしよう、富ませようと富国強兵策を強力に推し進めました。

 しかし、彼の行動は「其の富強を恃(たの)み後患を慮(おもんばか)らず」、つまり、後に憂いを生じてしまうほど強引な方法で富強を追求するものでした。田口氏は、彼の極端な富国強兵策の顛末から、「自分の国家を長続きさせたいと思うほど、反対のことをしてしまうもの。注目すべきは現在自分がとっている方法であり、客観的に自分の方法を見ることが重要だ」という教訓を読み取ります。この「国家」を「会社・企業」に置き換えれば、彼の行動は、現代のリーダーに対する反面教師になるわけです。


●皇帝が犯した最大の誤り


 さらに皇帝がたどった道は、全てのものを自国の強化と自分の栄華のために使うというものでした。優秀な人材や美女を周りに集め、贅沢品を取り揃え、宮殿を豪華にしつらえる。多くの滅亡した君主と同じ道を彼もとったわけですが、なかでも大きな誤りは、国民を使役でこきつかったことでした。

 豪華な宮殿や庭園の工事のために国民を休みなく使い、領土拡大のための戦争となれば、兵役に駆り出すというものでした。これによって、隋の国民はすっかり疲弊してしまいました。

●独占欲が招いた転落への道


 また、多くのものを手に入れ、全て自分のものだ、と思ってしまえば、今度は皆が自分のものを狙っているにちがいないと疑心暗鬼になるのが世の常。歴史上、多くの偉人たちが晩年この疑いの念にとらわれましたが、彼もその例外ではありませんでした。「転落のスタートは、すべて自分のものだと思うところから来ている」と田口氏も戒めています。

 人を疑えば、人の見方も誤ってしまいます。彼は他者のよくない噂を吹き込んでくるような人物を重用し、逆に「これはいけません」と耳の痛いことでも、正しく諭してくれるような人物は嫌い、排除してしまいました。これでは臣下は皆、皇帝から離れてしまいます。もちろん、国民も過酷な皇帝の令に耐えかねて、逃げてしまいます。

●リーダーのためのテキストとして『貞観政要』を読む


 臣下も国民も彼のもとを離れてしまったため、国はどんどんと崩壊状態になり、最終的に彼の周りには彼を心底思う人は誰もいなくなってしまいました。結果的に皇帝は非常に位の低い者に刺されて命を落としました。こうして、一時はその優れた文化を学ぶために日本から遣隋使も送られた大帝国・隋は、彼の代を最後に滅んだのです。

 今から1400年近く昔のことですが、皇帝・煬帝についての話の中には、現代のビジネス世界にも通じることとして学び取ることができるものも少なくありません。『貞観政要』をリーダーのためのテキストとして、田口氏の解説を手がかりに読んでみてはいかがでしょう。
(10MTV編集部)