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トクホは本当に健康にいい?食の情報の落とし穴
トランプ大統領が当選したアメリカ大統領選以来、「フェイクニュース」という言葉がよく使われるようになりました。フェイクニュースとは、すなわち虚偽の情報に基づいて作られたニュースのこと。実はこのフェイクニュース、食の世界では、ずっと昔から驚くほど氾濫しているのです。
たとえば、「ブルーベリーを食べると目が良くなる」、「心臓病予防に赤ワインが効く」、「国産は安全」などの情報を耳にしたことはありませんか。あるいは、正しいと信じこんではいませんか。
これらの情報は、科学的根拠が希薄な点で、食のフェイクニュースと言うことができます。食のフェイクニュースは、その情報と関連のある商品の売り主が喧伝しているだけではなく、国が発信してしまっている場合もあります。国が認める「特定保健用食品(トクホ)」がその一例です。
信じこみやすいという点では、松永氏は、テレビなどマスコミの情報にも誤りが多いと指摘しています。新著『効かない健康食品 危ない自然・天然』(松永和紀著、光文社)においては、「テレビは、変わったこと、センセーショナルなことを報じがち。それが正しいとは限りません」と注意を促しています。
最終的には、当日の放送中に同番組のメインキャスターを務める有働由美子アナウンサーが、イノシシの生食は危険を伴うという内容の訂正と注意喚起を呼びかけ、事なきを得ました。
しかし、2つとも科学的にみると根拠が希薄です。そもそも、有機野菜と呼ばれている商品は、かならずしも無農薬ではないということは知っておくべきでしょう。そして、無農薬だからおいしくなるということも、おそらくありません。安全性についても、有機栽培と普通栽培もどちらも安全が確保されており、また、それぞれに安全性と危険性があり、一概に比べることはできません。
正しいと信じることは危険なことで、真か偽か、善か悪か、どちらかに偏ると判断を誤りやすくなります。『疑似科学入門』(池内了著、岩波書店)では、「思考停止は疑似科学の入口」とあります。疑似科学を暴こうとして疑似科学に陥る科学者やジャーナリストもいます。まさに、ミイラ取りがミイラになる。
明治大学科学コミュニケーション研究所の「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」は、サプリメント、民間代替医療、生活環境改善などについてその信憑性の評定を試みています。
ただちに正解を求めるのではなく、慎重に思考し議論を進めること、なんとなく「信じる」ことよりもきちんと「調べる」ことが重要です。上の2つのサイトは、「信じる」より「調べる」を実践する情報ソースとして、ぜひご活用ください。
たとえば、「ブルーベリーを食べると目が良くなる」、「心臓病予防に赤ワインが効く」、「国産は安全」などの情報を耳にしたことはありませんか。あるいは、正しいと信じこんではいませんか。
これらの情報は、科学的根拠が希薄な点で、食のフェイクニュースと言うことができます。食のフェイクニュースは、その情報と関連のある商品の売り主が喧伝しているだけではなく、国が発信してしまっている場合もあります。国が認める「特定保健用食品(トクホ)」がその一例です。
トクホは本当に健康にいい?
科学ジャーナリストの松永和紀氏は、「国が許可したトクホといえども、効果は非常に小さい」と警告しています。実際に「表示の含有量が含まれていなかったり、広告宣伝の行き過ぎを消費者庁に指導されたり」、日本では「効果が大々的に広告宣伝されている」にもかかわらず、海外では「根拠が薄い」と判定され、表示が許可されないこともあるそうです。信じこみやすいという点では、松永氏は、テレビなどマスコミの情報にも誤りが多いと指摘しています。新著『効かない健康食品 危ない自然・天然』(松永和紀著、光文社)においては、「テレビは、変わったこと、センセーショナルなことを報じがち。それが正しいとは限りません」と注意を促しています。
NHKも間違える食の情報
松永氏は、昨年、NHKの人気情報番組「あさイチ」の9月27日の放送中、同番組の食についての認識不足をTwitterで言及し、話題となりました。番組がイノシシの刺し身を紹介したのに対して、「イノシシの生食は、肺吸虫症、E型肝炎等のリスクがあります。絶対に生で食べてはいけない」とツイート。さらに特集内容について「この番組、食に関しては問題が多すぎる」と批判しました。最終的には、当日の放送中に同番組のメインキャスターを務める有働由美子アナウンサーが、イノシシの生食は危険を伴うという内容の訂正と注意喚起を呼びかけ、事なきを得ました。
有機野菜の真実
私たちが強く信じこんでしまっている代表例として、有機野菜も挙げることができます。よく言われるのが「農薬は危ない」「有機野菜はおいしい」という言説です。しかし、2つとも科学的にみると根拠が希薄です。そもそも、有機野菜と呼ばれている商品は、かならずしも無農薬ではないということは知っておくべきでしょう。そして、無農薬だからおいしくなるということも、おそらくありません。安全性についても、有機栽培と普通栽培もどちらも安全が確保されており、また、それぞれに安全性と危険性があり、一概に比べることはできません。
思考停止は疑似科学の入口
フェイクニュースは疑似科学、つまりニセの科学を根拠としています。疑似科学は、素人から見ると、一見正しそうに見えてしまうため、真偽を見抜くのは簡単ではありません。また、人間はもともと信じやすい傾向があります。脳科学者の中野信子氏によると、人間の脳は、自分で判断するよりも「信じる」ことを快楽と感じてしまうそうです。正しいと信じることは危険なことで、真か偽か、善か悪か、どちらかに偏ると判断を誤りやすくなります。『疑似科学入門』(池内了著、岩波書店)では、「思考停止は疑似科学の入口」とあります。疑似科学を暴こうとして疑似科学に陥る科学者やジャーナリストもいます。まさに、ミイラ取りがミイラになる。
「信じる」より「調べる」ことが大事
食べ物に関しては、「健康!」とか、「危ない!」とか、断定的に主張している広告や商品は疑った方がいいかもしれません。では、そのとき、どうやって調べればいいのか。松永氏は、信頼できる情報ソースとして、イギリスの政府機関「国民保険サービス」のウェブサイト「NHS Choices」を挙げています。ただし、イギリスのウェブページなので、言語は英語です。明治大学科学コミュニケーション研究所の「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」は、サプリメント、民間代替医療、生活環境改善などについてその信憑性の評定を試みています。
ただちに正解を求めるのではなく、慎重に思考し議論を進めること、なんとなく「信じる」ことよりもきちんと「調べる」ことが重要です。上の2つのサイトは、「信じる」より「調べる」を実践する情報ソースとして、ぜひご活用ください。
<参考文献・参考サイト>
・『効かない健康食品 危ない自然・天然』(松永和紀著、光文社)
・『疑似科学入門』(池内了著、岩波書店)
・薬事法マーケティングの教科書:特定保健用食品(トクホ)とは?
http://yakujihou-marketing.net/archives/1381
・livedoor NEWS:NHK「あさイチ」の騒動について
http://news.livedoor.com/article/detail/12070686/
・農業協同組合新聞:2017.05.31 「農作物・生産者・環境」の安全守る 農薬危害防止運動
http://www.jacom.or.jp/nouyaku/tokusyu/2017/05/170531-32784.php
・イギリスの政府機関:NHS Choices
http://www.nhs.uk/pages/home.aspx
・疑似科学とされるものの科学性評定サイト
http://www.sciencecomlabo.jp/index.html
・『効かない健康食品 危ない自然・天然』(松永和紀著、光文社)
・『疑似科学入門』(池内了著、岩波書店)
・薬事法マーケティングの教科書:特定保健用食品(トクホ)とは?
http://yakujihou-marketing.net/archives/1381
・livedoor NEWS:NHK「あさイチ」の騒動について
http://news.livedoor.com/article/detail/12070686/
・農業協同組合新聞:2017.05.31 「農作物・生産者・環境」の安全守る 農薬危害防止運動
http://www.jacom.or.jp/nouyaku/tokusyu/2017/05/170531-32784.php
・イギリスの政府機関:NHS Choices
http://www.nhs.uk/pages/home.aspx
・疑似科学とされるものの科学性評定サイト
http://www.sciencecomlabo.jp/index.html
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