テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.11.21

会社で既得権益を振りかざす「老害」の特徴

 「健康」というと、ふつうは医学や栄養学を思い浮かべますが、社会学的な視点からアプローチする「健康社会学」という分野がここ最近注目されています。

 『他人をバカにしたがる男たち』の著者であり、健康社会学者の河合薫氏の研究テーマはとくに興味深く、社会にはびこる「他人をバカにしたがる人」、すなわち「ジジイ」の生態を分析しています。

 なぜ、日本社会はジジイ化が進んでいるのでしょうか。健康社会学という視点から日本を覗いてみましょう。

女性の中にも「ジジイ」はいる

 「ジジイ」とは何か。河合氏は「日経ビジネス オンライン」のインタビューにおいて「『既得権益』をリソース(対処資源)としている人たち」と答えています。

 「駅やコンビニで暴言を吐く」「上だけを見て仕事する」「反論してこない人にだけ高圧的」「相手の肩書き・学歴で態度が別人」、また、「前例がない」「そんなことやって責任を取れるのか」が口癖。これらもみんな「ジジイ」の特徴です。

 このように「ジジイ」は、「自己保身」に長けており、組織内で得た「既得権益」を振りかざすような人たちであり、そこには女性も含まれます。ジジイ化は女性の中でも進んでいるのです。

「ジジイ」とクラッシャー上司と老害

 河合氏は「ブランド」で大学や企業を選ぶ時点で「ジジイ化」は始まっていると述べています。

 「ジジイ」は「クラッシャー上司」を彷彿とさせます。クラッシャー上司とは、「部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人」のこと。実際に、河合氏は『クラッシャー上司』の著者である松崎一葉氏と「日経ビジネス オンライン」において、「上司と部下の力学」というテーマで対談しています。

 無理やりまとめると、「ジジイ」や「クラッシャー上司」は「老害」という言葉に集約できるかもしれません。

老害度チェック!

 日本経済新聞はが「老害度チェックリスト」を公開しています。項目は以下の通りです。もし、6つ以上当てはまれば「立派な老害」、3つ以上なら「老害候補」とのこと。

(1)自分の若いころと比べ、つい若い世代の仕事のやり方に口出ししてしまう
(2)つい自分の体験談や自慢話をしてしまう
(3)以前の人間関係を引きずり、昔の部下や後輩に命令口調で話してしまう
(4)経験が豊富にあるので、若手にはできないことが自分にはできると思う
(5)デジタル技術にうとく、エクセルやパワーポイントの資料作成を人に頼んでしまう
(6)電話を取るのは若手の仕事だと思っている。電話に出ても相手の言葉にいらいらして、横柄に話してしまう
(7)定年後も働く理由について「家にいると妻や家族が嫌がるから」「健康のため」など、周囲の士気が下がることを言ってしまう
(8)冗談のつもりでも「給与が半分になったから、仕事も半分しかしない」など、やる気を疑われる発言をする
(9)人の話を聞かなくなった、とよく言われる
(10)「この仕事は自分に合わない」と、与えられる仕事のより好みをする

 作家の斎藤美奈子氏は『他人をバカにしたがる男たち』を読んで「カタカナ多めのビジネス書だけど、自分を振り返るにはいいかも。私もちょっとヤバイです」と書評に漏らしています。

 いつのまにか、「ジジイ」「クラッシャー」「老害」なんてことにならないように、日頃から気をつけましょう。

<参考サイト>
・『他人をバカにしたがる男たち』(河合薫著、日本経済出版社)
・『クラッシャー上司』(松崎一葉著、PHP研究所)
・日経ビジネス オンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/100300125/
・ 河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学「窮地のクラッシャー上司は、あの言葉を繰り返す」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/031600097/?P=2
・日本経済新聞:「老害度」10項目でチェック
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO94103800X11C15A1I10000/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

地球儀を俯瞰する!?国際政治を読むために重要な地図の見方

地球儀を俯瞰する!?国際政治を読むために重要な地図の見方

地政学入門 歴史と理論編(2)なぜ地理が重要なのか

国際政治を地理的要素に着目して分析するのが地政学だが、なぜ地理が国家間の政治を考える上で重要な要素になるのか。その理由は地理が持つ「不変性」にあると小原氏は言う。また、地理を考えるときに欠かせないのが地図で、見...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/05/07
小原雅博
東京大学名誉教授
2

法曹界の『人間観』は間違い?脳の働きから考える「善悪」

法曹界の『人間観』は間違い?脳の働きから考える「善悪」

ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として

“ヒトの罪とは何か”――この問題について、法学や哲学的アプローチでなく、進化生物学・進化心理学的視点から考察するのが今回の講義の趣旨である。ヒトが社会的動物として集団生活を送る中で個人間に利害対立が生じ、これを調整...
収録日:2023/12/11
追加日:2024/02/25
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
3

道元『辨道話』の教え「修行こそわが仏門」とは

道元『辨道話』の教え「修行こそわが仏門」とは

石田梅岩の心学に学ぶ(5)根本としての仏教と道元の教え

石田梅岩の思想の根本をさかのぼると、最澄の説く「本来本法性 天然自性身」、またその言葉から修行への疑問を呈した道元に行き着く。最澄は「人間は本来仏性を持つ、生まれながらに悟った身だ」と言う。仏教とはそうした存在...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/05/06
田口佳史
東洋思想研究家
4

玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは

玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは

『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(1)「水の都」江戸の上水道

都市を繁栄させるためには水道の整備が不可欠だが、江戸は世界でも有数の水道網が張り巡らされた都市だった。『江戸名所図会』に描かれた玉川上水を中心に、「水の都」としての一面を持った江戸の上水道について深掘りしていく...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/05/05
堀口茉純
歴史作家
5

生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(4)エネルギーにおける「神経と血管」

AI技術の急速な発展と需要の拡大で、これからさらに世界的に電力消費が増えていくことが予想される。デジタルインフラを支える電力がますます必要とされる中で、カーボンニュートラルなエネルギー供給をいかにして安定的に行う...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/05/04
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者