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DATE/ 2016.11.21

運動会をやり直せ!モンスターペアレントの実態と対策

 2016年10月、茨城県日立市で、「運動会をもう一度やれ」と学校の校長らに包丁を突きつけて脅した夫婦が逮捕されました。警察では、何度かの要求に学校側が応じなかったため、自宅へ校長らを呼びつけ、犯行に及んだと見ています。恐るべき「モンスターペアレント」による事件ですが、実情はどうなっているのでしょうか。

「モンスターペアレント」って、どんな意味?

 「モンスターペアレント(またはペアレンツ)」という言葉が初めて「知恵蔵」に出たのは2008年。学校現場で、教師や学校の教育方針に何かとクレームをつける保護者のことを指す和製英語だと説明されています。

 この言葉の考案者は、元小学校教諭でさまざまな教育法開発に熱意を注ぐ向山洋一氏。理不尽な要求をする親が増えてきたのは1990年代以降で、学校や教師へのリスペクトが崩れたこと、学校に対する消費者意識の高まりが原因だと言われています。

 また、識者にはモンスターペアレントという用語そのものが、保護者と学校の対立を煽る方向に働いているのではないかと懸念を持つ人も。若者から熟年層まで幅広い読者を持つ内田樹氏は、クレーマー vs カウンタークレームという構造による対立激化を心配しています。

モンスターペアレントは何を要求してくるの?

 いわば「いちゃもん」なので、一概には言えませんが、「子どものケンカに親が出て」、相手に対する厳しい処罰を学校に要求するケース、また「自分の子どもを特別扱いしろ」というものが多数。また、保育所などでは、幼児からの「先生にいじめられた」といった言葉をその通りに解釈して、ねじ込んでくる親も後を絶たないようです。

 理不尽さを示す例としては、「仲の悪くなった子どもとのひきはなしのため、クラス替えの要求」「子どもはピーマン嫌いなので、給食からピーマンを抜いてほしい」「部活で汚れたスポーツ着は、学校で洗濯しろ」などが挙げられます。笑える例としては「身長の高い子の隣に写った子どもが貧相に見えるので、もう一度撮影してほしい」「自分の子はテニスが得意なので、テニス部を作ってほしい」など、これらはいわゆる親バカが進行した状態ですね。

先生たちの対応は?

 モンスターペアレントと呼ばれる保護者について、全国webカウンセリング協議会では6種類に分類し、タイプ別の対応を呼びかけています。
1.わが子中心型
2.ネグレクト型
3.学校依存型
4.ノーモラル型
5.権利主張型
6.暴力型
「運動会やり直し」を要求して先生たちを呼びつけた日立市の両親の場合は、1.5.6.がミックスした形と言えそうです。

 保護者への対応について、同協議会理事長の安川雅史氏は、11か条のアドバイスをしています。

1. 職員室ではなく、相談室や応接室で個別で対応する
2. 対角線の左前に相手を座らせ、右脳に話しかける
3. 一つひとつ反論せず、相手の話を受け止める
4. 腕や足を組んだり、ふんぞり返らない
5. 1%でも相手の話にもっともなことがあれば、それだけを素直に謝る
 ただし、一人で責任を抱え込まず、後日の調査を約束する
6. 親がわざわざ時間を取って学校まで来てくれたことへの感謝を伝える
7. 親が発達障害や統合失調症などの場合は、話が通じる家族に協力してもらう
8. 親が暴力団などで、脅してきた場合は、2-3名体制で話し合いをする
9. PTAの協力を得て、他の保護者にも協力してもらう
10. 日付、内容などは、必ず親が帰ってからできるだけ詳細にまとめる
11. 度が過ぎた違法な要求や不当な請求をしてくる親には、「こちらも言ったことに責任を持つために、会話の内容は録音させてもらう」と事前に伝える。状況が複雑な場合は教育委員会、警察、児童相談所、精神保健福祉センター、保護司、民生委員、弁護士などからもアドバイスをもらう

 このアドバイスを読んでいると、親と教師が互いにモンスター呼ばわりせず、「人間対人間」として向き合うことに解決の糸口が見えてくるようです。

<参考サイト>
・全国webカウンセリング協議会 いじめ対策
http://www.ijimesos.jp/モンスターペアレント対応/

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