テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.01.08

年収と読書の関係…お金持ちに読書家が多い理由

 急速に読書ばなれが進んでいます。インターネット、スマホの普及が大きく影響しているようです。読書は手間がかかりますし、お金もかかります。スマホさえあれば、本なんていらないという方も多いはず。

 そんなみなさんも年収と読書量が関係していると聞いたらいかがでしょう。世間の大富豪たち、ホリエモンもビル・ゲイツもザッカーバーグもみんな読書家として有名です。実際にどのくらい読書と年収は関係しているのか検証していきます。

急速に進行する読書ばなれの実態

 そもそも、そんなに読書ばなれは深刻なのか。出版文化産業振興財団の2010年の「現代人の読書実態調査」によると、1冊も読まないと答えた人は23.7パーセントでした。それが文化庁の2014年の調査では47パーセント。これはたしかに深刻です。時の経過とともに、明らかに読書ばなれが進行していることがわかります。

 また、文化庁の調査では65.1パーセントが「読書量は減っている」と回答しており、その理由については、「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」が最も多く51.3パーセント、「視力などの健康上の理由」が34.4パーセント、「情報機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等)に時間が取られる」が26.3パーセントとなっています。

 やはりインターネット、スマホの普及が大きく影響しているのです。

世帯年収が高いほど読書量は多い

 出版文化産業振興財団の調査では、「世帯年収が高いほど読書量は多い傾向」という結果を明らかにしています。

 1カ月に最低3冊以上本を読むのは、世帯年収が「1500万以上」の人が最も多く 40.5%である一方、最も少ないのは「300~500万未満」の人で22.6%。また、読書しないと回答した人が一番少ないのは、世帯年収が「1500 万以上」の人で9.5%、一番多かったのは「300~500 万未満」で 28.8%とのこと。

 この調査結果だけから断言することはできませんが、たしかに「世帯年収が高いほど読書量は多い」という傾向はあるようです。

読書の効用はアウトプットにある

 NHK「クローズアップ現代+」では、読書の効用を取材しています。読書が脳に与える影響を研究する東京大学大学院の酒井邦嘉教授は「本を読むという行為は決して情報を得たいというためにやるわけではなくて、むしろ『自分の中からどの位引き出せるか』という営みなのです」と述べています。

 つまり、読書は、本から情報をインプットするだけでなく、むしろ自分の中からアウトプットする力が試されるということでしょう。

 酒井教授はさらに次のように述べています。「読書と言っても、そういう言葉だけでは実はなくて、視覚的に映像を頭の中に想起するとか、過去の自分の体験と照らし合わせて対比して考えるとか、自分で得られた情報から更に自分で自分の考えを構築するというプロセスがはいってくるので、人間の持っている創造的な能力がフルにいかされることになります」。ここでは「自分で自分の考えを構築するというプロセス」に力点を置いて読書の効用を説明しています。

インターネットに欠けているもの

 たしかに年収の高い人、仕事のできる人はインプットもさることながらアウトプットの力に優れ、独自の表現力をもっています。

 インターネットは超高速で便利ではありますが、ひたすら検索とインプットの連続で、「自分で自分の考えを構築するというプロセス」が欠けています。

 なんとなく読書と年収の関係が見えてきました。では、読書を通して思考力、論理力、表現力を高めるためにはどうすればいいのか。

「読む」「書く」「話す」の三拍子

 知の巨人、日本一の読書家とも噂される立花隆氏は、「クローズアップ現代+」の取材に対して、「読むだけじゃなくて、その次のステージとして、アウトプット」、「知的な内容のものを深めるだけじゃなくて、その全体をまとめるためには、やっぱり書くっていうことが必要なんですね」と述べています。

 「読む」と「書く」の両方が合わさって「読書」です。「読む」だけで終えずに「書く」、さらにそれについて「話す」も加えれば、読書力、思考力、論理力、表現力を同時に高めることができるはずです。

 テレビ朝日「アメトーーク!」の読書芸人のように本を紹介するのもいいでしょう。ともかく大事なのは読書のアウトプットに着目することです。

<参考サイト>
・出版文化産業振興財団:2010 年『国民読書年』に向けて 現代人の読書実態を調査 『現代人の読書実態調査』
http://www.jpic.or.jp/press/docs/2009JPIC_research_R.pdf
・文化庁:平成25年度「国語に関する世論調査」の結果の概要
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf
・NHKクローズアップ現代+:広がる“読書ゼロ”^日本人に何が~ http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3592/1.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?

「第二次トランプ政権は、第一次政権とは全く別の政権である」――そう見たほうが良いのだと、柿埜氏は語る。ついつい「第1次は経済重視の政権だった」と考えてしまいがちだが、実は第2次政権では「経済」の優先順位は低いのだと...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/10
柿埜真吾
経済学者
2

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性

アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
3

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

医療から考える国家安全保障上の脅威(3)NBC兵器をめぐる最新情勢

2006年ロシアのKGB元職員暗殺には「ポロニウム210」というNBC兵器が用いられた。これは、検知しやすいγ線がほとんど出ない放射線核種で、監視の目を容易にすり抜ける。また、2017年金正男氏殺害に使われた「VX」は、2種の薬剤を...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/15
山口芳裕
杏林大学医学部教授
5

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授