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DATE/ 2024.04.29

なぜタバコを吸い続けるのか?喫煙者の本音とは

 何かと風当たりの強まっている、喫煙。ふた昔も前は、男ならば吸っているのが当たり前、なんて時代でした。ダウンダウン・ブギウギ・バンドが、朝から晩までタバコを吸っている様を歌い上げた『スモーキン'ブギ』が大ヒットを飛ばした1970年代は、成人男性の約80%がふかしていたそうです。

 しかし時代は流れ、厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によれば、喫煙者の割合は男性が25.4%と、今やすっかり少数派です。ちなみに女性は7.7%と、男性ほど大きく減ってはいませんが減少傾向が続いています。

 愛煙家には雲行きの良くないこの御時世、どんな心境で吸い続けているのか、筆者の周囲にいる愛煙家たちの声を聞いてみました。

質問1「度重なる値上げにもかかわらず吸い続ける理由とは?」

 ずばり聞いてみました。吸わない人でも「タバコ」=「価格上昇」のイメージは強いですよね。値上げの内実は原材料費の高騰などではなく、ほとんど税金だそうです。

・「習慣になっているからです。厄介な仕事を片付けた後の頭を切り替えるルーティンになっています。ただの中毒なのかもしれませんが、値段相応の対価に値すると認識しています」(公務員32歳)
・「吸っている時の時間が自分にとって欠かせないリフレッシュタイムだから」(学芸員30歳)
・「習慣だからです、1000円ちょっとで2箱買えるうちはやめません」(会社員26歳)
・「エピキュリアン(享楽主義者)だから」(大学院生30歳)

 やはり「リフレッシュ」のためのアイテムという声が多く寄せられました。かつて喫茶店といえばコーヒー&シガレット、どちらも「一服」という言葉で嗜まれていましたしね。そして悲しいかな、愛煙家は値上げにもどこか慣れっこになっているようです。

質問2「周りは何か言ってる?」

 風当たりの強い昨今、家族や同僚、友人や恋人からは何か言われていないか、余計なお世話と知りつつ聞かせてもらいました。

・「孫が学校の授業で習ってきてから、おじいちゃん、タバコは身体によくないんだよ、副流煙は家族にも悪いんだよって言われてしまって…」(再雇用職員61歳)
・「嫁に臭いから室内喫煙禁止、近所迷惑だからベランダ喫煙禁止と言い渡されてます」(事務職30歳)
・「帰郷するたびに家族、親戚一同からやめた方がいいって言われてます」(会社員26歳)

 一般にタバコの健康被害教育が反映されているとわかる回答が多く寄せられました。お孫さんに禁煙しなさいと諭されるのは沁みそうですね。また、最近ではマンションのベランダのホタル族も階下に落ちるタバコの灰が住民トラブルに繋がるそうで、駐車場まで出て吸っている方も居るようです。逆に肩身の狭い思いをしているせいか、同好の士を見つけるとすぐ仲良くなれるのか、職場でのタバコミニュケーションの重要性を説く声もありました。

質問3「嫌煙の世の中に対して喫煙者としての主張」

 増税、taspoの採用、路上喫煙禁止地区、グリーン車全面禁煙、東京都は受動喫煙防止条例が国に先行して成立するなど、愛煙家への包囲網が増していく世の中に対して一言いただきました。

・「中毒性、有毒物質の出ないタバコを開発してとしか…せめて電子タバコは許してほしい。うちのお客さんはたいてい吸う人たちなんだしさ」(接客業40歳)
・「タバコ休憩が無駄だって損失給料額を試算する人とかいるけど、椅子に座ってる長さより、リラックスして効率よく作業できている時間で評価して欲しいです」(SE 30歳)
・「愛煙家も嫌煙家もそれぞれの主張があるでしょうし特にはないです。ただ、喫茶店や飲み屋にタバコがないと様にならないんじゃないかなとは思います」(公務員32歳)

 飲食店など職種によっては、店内禁煙になったら客足が遠のいてしまうと嘆く声が寄せられています。タバコそのものや分煙室、煙の処理能力の技術革新などを求める声も上がりました。健康被害そのものを取り除けられるなら、それに越したことはないのも確かですね。

質問4「風当たりは強くなる一方だが、続けたいorやめたい?」

 最後の質問はやはり禁煙するつもりがあるかになります。禁煙外来も健康保険が適用されるなど、求めて門を叩けば開かれるシステムもできてきましたが…。

・「金銭面の折り合いがつき、完全非合法化されないうちは続けたい」(大学院生30歳)
・「やめられるならやめたいですが、やめるための労力を注ぐことについて、そこまで自分の中で優先順位は高くないです」(公務員32歳)
・「きっかけがないですね、法律で禁止してくれれば嫌でもやめるけど」(会社員26歳)
・「少しずつ電子タバコに変えていってるよ。これも身体によくないといわれるけど、勘弁して欲しい」(再雇用職員61歳)

 愛煙してきた方にはやめたくないという声が多く聞かれました。また、電子タバコの登場に期待している人はかなり多いようです。「まだ紙巻、吸ってるの?」なんてタバコ仲間で言い合っているとか。はたして電子タバコは愛煙家の最後の砦になるや否や。いっそタバコそのものを法律で禁止にしてくれればいいという自嘲気味な声も聞かれるのは、ジレンマでしょうか。

 喫煙もまたひとつの文化として人類とともにありました。私たちの代で滅びゆくのか、次世代にも残ってゆくのか、今が大きな分かれ目のようです。

<参考サイト>
・2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授