テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.02.12

日本を訪れる中国人はネットで何を検索しているか?

過去最高を記録した訪日中国人数

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を間近に控え、政府が観光事業に力を入れていることもあり、日本を訪れる外国人が増加しています。日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、2018年の訪日外国人数は3119万2000人。JNTOが統計を開始した1964年以降、最多となりました。

 その内訳で、最も多くを占めるのが中国人。2018年は838万人を記録しており、訪日外国人数全体の26.9%にもなります。この割合は以前から高く、2017年は25.6%、2016年は26.5%でした。増減の幅は小さいですが、安定的に日本の観光事業を支えているといえるでしょう。

 訪日中国人といえば、「爆買い」のイメージが強いですよね。もともと中国人には、家族や親族にたくさん贈り物をすることが大切にしている意思表示という習慣があるため、ここに中国の経済発展が重なって富裕層が増えたことが爆買いにつながったと考えられます。しかし爆買いが注目されるようになった2015年頃から数年が過ぎ、近年になって訪日中国人の動向には変化が起きているようです。

中国人はよりディープな日本を知りたがっている

 その変化の傾向は、中国の大手ポータルサイト・バイドゥ(百度)の検索ランキングからうかがえます。訪日中国人を中心とする百度検索サービスユーザーが検索した、日本に関する検索データの2018年ランキングでは、より具体的な都市名や観光対象の検索件数が増加しているのです。

 バイドゥが発表したランキングによれば、都道府県ランキングでは東京都、京都府、大阪府などの常連に並んで、愛知県が急上昇しました。また、心斎橋、横須賀、那覇などの都市名や地域名も多く検索されています。これは訪日中国人の知識が豊富になり、おなじみの観光地以外にも興味が向いたり、おなじみの観光地であってもより詳細に知ろうとしたりしている結果といえそうです。

 さらに、観光地ランキングでは昨年圏外だった皇居が1位となりました。天皇陛下の退位が中国でも注目されていることがわかります。このほかにも奈良公園の鹿や渋谷駅前の忠犬ハチ公像などかなり細かい観光対象が検索されており、逆に2016年から2年連続でトップだった富士山は圏外となりました。しかし富士五湖のひとつの河口湖は3位に入っており、ここでもより詳細な検索が目立ちます。

 このような変化は、訪日中国人の目的が買い物という「モノ消費」から体験やサービスという「コト消費」の重視に移行していることを意味しているでしょう。しかもよりディープでニッチな、「オンリーワンの訪日体験」を求める人が増えているのです。

日本のサブカルにも注目している中国

 バイドゥは2018年から、アニメの検索ランキングも集計しています。ランクインした検索ワードには「ガンダム」や「ナルト」などの定番人気作品が並ぶ中、「ワンピース」に登場する剣士のキャラクター・ゾロの名前も。日本を訪れようと考える中国人は日本のアニメに関しても、キャラクター名で検索するほどに充実した知識を備えているのですね。

 日本動画協会の「アニメ産業レポート2017」によれば、日本アニメの国別契約本数1位は中国。日本の新作アニメは中国でもほとんど同時期に配信されます。このため「ガンダム」のようないわゆる古典的名作だけでなく、比較的最近の作品が人気を博すことも珍しくありません。中でも2018年7月期の新作アニメ「はたらく細胞」は、中国の大手アニメ動画配信サイト・ビリビリ動画で全話の累計視聴数が1億回を突破するという盛り上がりを見せました。「はたらく細胞」は、人体の細胞を擬人化して役割やメカニズムをわかりやすく解説した作品なので、コアなアニメファンだけでなく一般層にも受け入れられたことがヒットの要因と考えられています。

 ビリビリ動画は日本で開発された人気ソーシャルゲーム「Fate/GrandOrder」や「刀剣乱舞」の中国版の運営もしており、中国でも大人気になっています。アニメやゲームから興味を持って日本を訪れる中国人は、これからも増えそうですね。

<参考サイト>
・Baidu Japan 中国人は日本の何が好き?? Baidu Japan、2018年訪日中国人の検索動向ランキング発表
https://www.baidu.jp/info/502/
・日本政府観光局 訪日外客統計の集計・発表
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/index.html
・アニメ!アニメ! アニメ「はたらく細胞」中国でも大人気! コア層だけでなく一般層にまで支持されたワケは?
https://animeanime.jp/article/2018/10/10/40689.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運と歴史~人は運で決まるか(2)運に恵まれるにはどうすればいいか

普通の人間の「運」については、どう考えればいいのだろうか。例えば、日本において消費文化が花開いた江戸時代、11代将軍・徳川家斉の治世には、庶民が「運がめぐってこない」ことを皮肉った狂詩があった。運には「めぐりあわ...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/25
山内昌之
東京大学名誉教授
2

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
5

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授