社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
歴史家から見た中国・韓国の歴史認識とは?
2015年の夏に予定されている安倍晋三総理大臣の戦後70年談話発表に向け、有識者による「21世紀構想懇談会」が発足。山内昌之氏は、そのメンバーとしてこれまで会合を重ねてきた。
山内氏は、中国唐代の歴史家、劉知幾(りゅうちき)の言葉を紹介しながら、戦後70年談話を前にして国としての歴史観、歴史認識について話をしてくれた。
私たち日本は幸いにして、歴史を研究し、さまざまな立場からその歴史観を表明する自由を保障されているが、世界を見渡すとそうした国ばかりではない。
政府や公の権力が厳しく統制する場合もあれば、上に立つ公的機関自体が、歴史に対して史実よりもある種の思い込みとも言える見方を優先させることがあるのだ。
山内氏は劉知幾の『論語』や『春秋』についてのシニカルな言葉を取り上げ、残念ながら中国や韓国には、自国をもっぱら善とし日本を悪事ばかり行った国と見なす姿勢が共通していると指摘する。
日本にも、史実を正しく認識できず曲筆を行う歴史修正主義者は存在するが、事実を直筆するのが当然と考える者が圧倒的多数であり、多様なものの見方を認めているからこそ、さまざまな立場から中学、高校の歴史教科書が書かれている。
しかし、中国や韓国では、時に史実より想像に基づく事象によって歴史をつくることが行われ、実証を明らかにする本来の歴史学とは程遠い姿を見せることに、山内氏は驚きを禁じ得ない。
中国や韓国がこうした歴史観をもつ理由を、山内氏は二つ挙げている。
一つは、これらの国では、歴史学において事実の究明より感情や強い思い込みが優先するということが前提となってしまっていること。
二つ目は、こうした歴史観を外交に効果的に利用しようとする政治的判断が大きいということだ。
日本を常に「加害者」と位置付け、正確な史実を究明することなく、自国の都合に基づく記念館や記念碑を他国にも建造してしまうといった行為は、過去の歴史に対する責任を持たないに等しいと、山内氏は強く論じる。
大切なのは、歴史的責任を痛感し、そのために史実を緻密に議論しようとする態度であるはずだ。これは、歴史研究に真摯に身を投じてきた山内氏の心からのメッセージである。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
なぜモンゴルがあれほど大きな帝国を築くことができたのか。小さな部族出身のチンギス・ハーンは遊牧民の部族長たちに推されて、1206年にモンゴル帝国を建国する。その理由としていえるのは、チンギス・ハーンの圧倒的なカリス...
収録日:2022/10/05
追加日:2023/01/07