社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.06.18

歴史家から見た中国・韓国の歴史認識とは?


 2015年の夏に予定されている安倍晋三総理大臣の戦後70年談話発表に向け、有識者による「21世紀構想懇談会」が発足。山内昌之氏は、そのメンバーとしてこれまで会合を重ねてきた。

 山内氏は、中国唐代の歴史家、劉知幾(りゅうちき)の言葉を紹介しながら、戦後70年談話を前にして国としての歴史観、歴史認識について話をしてくれた。

 私たち日本は幸いにして、歴史を研究し、さまざまな立場からその歴史観を表明する自由を保障されているが、世界を見渡すとそうした国ばかりではない。

 政府や公の権力が厳しく統制する場合もあれば、上に立つ公的機関自体が、歴史に対して史実よりもある種の思い込みとも言える見方を優先させることがあるのだ。

 山内氏は劉知幾の『論語』や『春秋』についてのシニカルな言葉を取り上げ、残念ながら中国や韓国には、自国をもっぱら善とし日本を悪事ばかり行った国と見なす姿勢が共通していると指摘する。

 日本にも、史実を正しく認識できず曲筆を行う歴史修正主義者は存在するが、事実を直筆するのが当然と考える者が圧倒的多数であり、多様なものの見方を認めているからこそ、さまざまな立場から中学、高校の歴史教科書が書かれている。

 しかし、中国や韓国では、時に史実より想像に基づく事象によって歴史をつくることが行われ、実証を明らかにする本来の歴史学とは程遠い姿を見せることに、山内氏は驚きを禁じ得ない。

 中国や韓国がこうした歴史観をもつ理由を、山内氏は二つ挙げている。

 一つは、これらの国では、歴史学において事実の究明より感情や強い思い込みが優先するということが前提となってしまっていること。

 二つ目は、こうした歴史観を外交に効果的に利用しようとする政治的判断が大きいということだ。

 日本を常に「加害者」と位置付け、正確な史実を究明することなく、自国の都合に基づく記念館や記念碑を他国にも建造してしまうといった行為は、過去の歴史に対する責任を持たないに等しいと、山内氏は強く論じる。

 大切なのは、歴史的責任を痛感し、そのために史実を緻密に議論しようとする態度であるはずだ。これは、歴史研究に真摯に身を投じてきた山内氏の心からのメッセージである。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性

ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
3

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
4

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
5

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題

半世紀ほど前、松下幸之助に経営者の条件について尋ねた田口氏は、「運と徳」、そして「人間の把握」と「宇宙の理法」という命題を受けた。その後50年間、その本質を東洋思想の観点から探究し続けてきた。その中で後藤新平の思...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/24