社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「妄想」をエンジンにした思考法とは?
仕事でもプライベートでも「こうなったらいいなぁ」「こんなことができたらいいのに」ともらすと、「それって単なる妄想だよね」と即座に切り捨てられてしまう。そんな経験は誰しもが持っているのではないでしょうか。ですが、その「妄想」をエンジンにした思考法が最近、話題になっているのです。
「妄想」と聞くと単なる大風呂敷、夢物語のイメージがありますが、どんな大きなビジョンも最初は自分のなかからわき上がってくる「こういう世界をつくりたい」「世の中がこんな方向に向かえばいいのに」という気持ちから出発するものだ、と佐宗氏は言います。しかし、自分一人の頭でもやもや考えているうちは、それはいわば北極星のようなもの。「こっちだよ」と空の高いところで方向を指し示してはいるものの、まださほど明確には見えませんし、ましてや手に取ることもできません。
では、このいささか遠い存在の北極星を、自身にもあるいは他の人にももっとクリアに見えるようにするためにはどうしたらいいのでしょう。
まず、自分のなかからわいてくる「妄想」、たとえば「なんとなくこういう世の中は嫌だなぁ」「こういうふうになったらいいな」という曖昧模糊としたイメージを少し発展させ、「こういう状態になったらいいんじゃないか」「こういうものがあると便利なんじゃないか」と具体的に「知覚」する。
それが第一段階で、「知覚」したら今度はその新たなイメージを「一言で表すとこういうことだ。それは既存のものとこういう点で違っている、あるいは優れている」と、自分なりの言葉に「組替」をしてみる。次にそれを具体的に「表現」して、他人に伝えていく。
このような「妄想・知覚・組替・表現」のステップを踏んで、自身の内面でうごめいていた妄想を、世間に向けたビジョンに発展させていきます。妄想レベルから可能性の芽を引き出して形にし、論理的に他者に伝えることで、「実現に向かって一緒にやっていこう」と第三者を巻き込みやすくなるのです。
こうした障壁を取り除くためにも佐宗氏は、「どうしたらこの問題を解決できるか」というマイナスをゼロにする思考法(ISSUE-DRIVEN)ではなく、「これをどう実現するといいか」と考える、ゼロとプラスのギャップを埋める思考法(VISION-DRIVEN)を推奨しているのです。
それは、端的にいえば「もしも○○だったら」という問いや願いを常に頭のなかに置き、考え続けることでもあるのですが、佐宗氏はそのお手本が、実はドラえもんにあると言います。たとえば、「翻訳こんにゃく」は「世界中の人ともっと自由に話せたり、理解し合えたらいいのに」という思いが、自動翻訳機になったと見ることができます。「もしもボックス」の場合、「もしも世界中のいろいろな世界を体感できたら」という妄想は、今のVRヘッドセットになったともいえます。
考えてみれば、ビジネス化している代行サービスの多くは「もしそばにドラえもんがいて、こんなことをしてくれたらいいのに」の発想から出発しているのかもしれません。
コロナの影響で多くの方がテレワークとなるなど、仕事の環境変化を余儀なくされている現在ですが、そうしたなかで新しく生まれた時間をポジティブな「妄想」に活用してみてはいかがでしょう。頭のなかで眠っていたひみつ道具が、むくむくと動きだすかも。
自分のなかから生まれる「妄想」を出発点にする
佐宗邦威氏は著書『直観と論理をつなぐ思考法-VISION DRIVEN-』(ダイヤモンド社)のなかで、人それぞれの「妄想」を出発点に具体的で明確なビジョンを手にする思考法「ビジョンドリブン(妄想駆動)」について論じています。「妄想」と聞くと単なる大風呂敷、夢物語のイメージがありますが、どんな大きなビジョンも最初は自分のなかからわき上がってくる「こういう世界をつくりたい」「世の中がこんな方向に向かえばいいのに」という気持ちから出発するものだ、と佐宗氏は言います。しかし、自分一人の頭でもやもや考えているうちは、それはいわば北極星のようなもの。「こっちだよ」と空の高いところで方向を指し示してはいるものの、まださほど明確には見えませんし、ましてや手に取ることもできません。
では、このいささか遠い存在の北極星を、自身にもあるいは他の人にももっとクリアに見えるようにするためにはどうしたらいいのでしょう。
「妄想・知覚・組替・表現」のステップを踏んで実現に向かう
佐宗氏はこう言います。まず、自分のなかからわいてくる「妄想」、たとえば「なんとなくこういう世の中は嫌だなぁ」「こういうふうになったらいいな」という曖昧模糊としたイメージを少し発展させ、「こういう状態になったらいいんじゃないか」「こういうものがあると便利なんじゃないか」と具体的に「知覚」する。
それが第一段階で、「知覚」したら今度はその新たなイメージを「一言で表すとこういうことだ。それは既存のものとこういう点で違っている、あるいは優れている」と、自分なりの言葉に「組替」をしてみる。次にそれを具体的に「表現」して、他人に伝えていく。
このような「妄想・知覚・組替・表現」のステップを踏んで、自身の内面でうごめいていた妄想を、世間に向けたビジョンに発展させていきます。妄想レベルから可能性の芽を引き出して形にし、論理的に他者に伝えることで、「実現に向かって一緒にやっていこう」と第三者を巻き込みやすくなるのです。
ドラえもんに学ぶ「もしも○○だったら」の妄想力
このように「妄想」のタネをビジョンに育てて発動させる際に、一つ気をつけなければいけないのは、「現実性」を障壁にしないということです。「それはこういう理由でできない」とか「この点がネックだよね」と課題のみ先に抽出してしまうと、せっかくのビジョンがそこで頓挫してしまいます。こうした障壁を取り除くためにも佐宗氏は、「どうしたらこの問題を解決できるか」というマイナスをゼロにする思考法(ISSUE-DRIVEN)ではなく、「これをどう実現するといいか」と考える、ゼロとプラスのギャップを埋める思考法(VISION-DRIVEN)を推奨しているのです。
それは、端的にいえば「もしも○○だったら」という問いや願いを常に頭のなかに置き、考え続けることでもあるのですが、佐宗氏はそのお手本が、実はドラえもんにあると言います。たとえば、「翻訳こんにゃく」は「世界中の人ともっと自由に話せたり、理解し合えたらいいのに」という思いが、自動翻訳機になったと見ることができます。「もしもボックス」の場合、「もしも世界中のいろいろな世界を体感できたら」という妄想は、今のVRヘッドセットになったともいえます。
考えてみれば、ビジネス化している代行サービスの多くは「もしそばにドラえもんがいて、こんなことをしてくれたらいいのに」の発想から出発しているのかもしれません。
コロナの影響で多くの方がテレワークとなるなど、仕事の環境変化を余儀なくされている現在ですが、そうしたなかで新しく生まれた時間をポジティブな「妄想」に活用してみてはいかがでしょう。頭のなかで眠っていたひみつ道具が、むくむくと動きだすかも。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/05
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和は、いかにすれば実現できるのか――古今東西さまざまに議論されてきた。リアリズム、強力な世界政府、国家連合・連邦制、国連主義……。さまざまな構想が生み出されてきたが、ここで考えなければならないのは「平和」だけで良...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/08
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
テンミニッツ・アカデミーで、様々な角度から「睡眠」についてお話しいただいている西野精治先生(スタンフォード大学医学部精神科教授)に「熟睡できる環境・習慣とは」というテーマで具体的な方法論をお話しいただいた講義を...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/12/11
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理はプロジェクトマネジメント(PM)に強く要請される要素である。プロジェクトの有期性を保全するためには、スケジュールをどう分析するのか。また、一つのプロジェクトの所要期間はどう割り出され、どんな技法...
収録日:2025/09/10
追加日:2025/12/11


