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DATE/ 2021.09.06

パチンコはなぜ賭博じゃないのか?

 世の状況の変化によりだいぶ減少してきましたが、パチンコは長い間、私たちの生活の中に存在してきました。身近なギャンブルの代表とも言えますが、厳密にいうとパチンコはギャンブル(賭博)とはされていません。なぜなのでしょうか。

パチンコは風俗営業法で管理されている

 賭博(ギャンブル)の定義とはどのようなものでしょうか。刑法では明確にされていませんが、いくつかの法律事務所での解説によると「偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為」を指すと考えるのが一般的なようです。2021年8月現在、日本で認められているギャンブルは、宝くじ、競馬、競艇、競輪、オートレースといった公営ギャンブルのみ。これらは個別の法律によってルールが決められています。

 ではパチンコはどうなのかといえば、ギャンブルとして特別に管理されているわけではなく、一般的な風俗営業法で管理されています。つまり法律上、ギャンブルとはみなされていません。ちなみに個人や組織がギャンブルを行えば、刑法185条(賭博)や、場合によっては186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)に違反することになります。

三店方式を使えばギャンブルではない?

 ではなぜギャンブルではないのでしょうか。一言でいえば、パチンコは「三店方式」をとっているからです。この方式によりパチンコ店が直接、お客さんに賞金(現金)を払っているわけではない点がポイント。例えば、パチンコの場合、お客さんはお金を出して遊技用のパチンコ玉を借ります。ある程度遊んだあと、大当りして残った一定程度のパチンコ玉は、店内で「買い取り専用」の特殊景品と呼ばれるものに交換することができるのですが、この特殊景品を「古物商」である景品交換所が買い取るという形になるわけです。その後、第三者となる商品流通業者(景品卸問屋)を介してこの特殊景品がパチンコ店に戻るという流れです。ちなみに、これらの経営者は同じであってはいけません。全く別の業者を介しているという形が大事です。これが「三店方式」です。

 実際に、この「三店方式」を行わず、実質的にパチンコ店と景品交換所の経営が一緒だったとして摘発された事例も複数あるようです。

パチンコをギャンブルと認める動きもあった

 ということで、ややこしい仕組みなので、いっそのこと、ギャンブルとして認めればこういった手間はかけないで済むのに、と感じる方もすくなくないでしょう。実際に過去にはそのような動きもあったようです。

 2014年、安倍内閣の時代にパチンコ税が検討されています。この時は出玉を直接換金することを合法化し、そこに数%の税金を課そうというものでした。この時の試算では税率1%としても、年間約2000億円になるとの話もありました。ただし、この時は同時に消費税率を10%に上げるタイミングであったり、課税の仕方に問題があると指摘されたり、また、これまで公営ギャンブル以外を一切認めていない方針を180度変えることになるハードルの高さがあったりしたことなどから、見送られたということです。

<参考サイト>
賭博罪の成立要件とは?少額の賭け事、麻雀も犯罪になる!|弁護士法人泉総合法律事務所
https://izumi-keiji.jp/column/houritsu-gimon/tobakuzai
賭博で適用される刑罰|刑事事件弁護士アトム
https://atombengo.com/lawdb/tobaku/keibatsu
刑法|e-gov 法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
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