社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.04.13

スマホを自分で修理するのは危険!失敗例とは

 スマホの修理方法は多様化してきました。特に最近では非純正バッテリーとセットになった自己修理キットも販売されています。保証などに入っていない場合、自分で修理するほうがメーカーよりも安く済み、動画解説を見ても簡単にできる感じもします。しかし結論からいえば、これは危険が伴うことから避けたほうがいいと考えられます。どういう危険があるのか、確認してみましょう。

スマホのバッテリーはショートして発火しやすい

 スマホに使われているリチウムイオンバッテリーは、外部からの衝撃でショートしやすい性質があります。またスマホのサイズや形状に合わせて可能な限り薄く作られており、場所や配線の位置も綿密に設計されている点も要注意です。少しでも雑に扱うと、端子との接続がうまくいかなかったり、バッテリー自体に無理な力が加わったりして、発熱・発火するリスクがあります。

 実際の失敗例として挙げられているショートの事例には、以下のような状況があります。「バッテリーを取り外す時にバッテリー自体を曲げてしまう」、「バッテリーを金属のヘラで抜く」、「バッテリーを挿したままコネクターを抜く」といったものです。ショートを起こすと発煙・発火が発生します。この時多くの場合、同時に基盤も破損してしまいます。

 基盤の修理は高額になります。状況によっては買い替えたほうが早いという状況も生まれるようです。販売されている自己修理キットは多くの場合非純正バッテリーとセットになっています。しかしこの非純正バッテリーに関しては、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が、特に次のような危険性を指摘しています。「非純正バッテリーは設計不良により、異常発生時に安全保護装置が作動しないリスクが高い」また「純正品と比べ、品質管理が不十分な場合があり、普通に使っても事故に至るリスクが高い」とのことです。

キャリアなどの各社は積極的に注意喚起

 こういった点については、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルといったキャリアは連携して安全啓発活動を発信するなど、積極的に注意喚起しています。ドコモは「製造メーカー以外で分解したことがわかった場合、製品が出荷時の正常な状態ではなくなっているためメーカー保証の対象外になり、修理費用も高額になる場合があります」と示しています。

 また、auのサイトには「また、一般の方がスマホを分解した場合、メーカーの修理を受けられなくなる可能性があり、別の観点では分解を行った後に電源ONにすると、法律違反(電波法違反)になります。」と示しています。自己修理で問題が生じた際には、どこのキャリアでもメーカー保証は受けられないようになっているようです。

非純正バッテリーでは火災事故も発生

 さらにNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)によると、スマホや掃除機などの非純正バッテリーによって、「2017年から2021年の5年間で134件の事故が報告されていて、特にこの3年間は事故が急増し、家屋が全焼するほどの火災も毎年起こっている」と報告しています。

 ここまで見たとおり、スマホの自己修理はかなりリスクが高いと言えるでしょう。ネット上には自己修理の動画が多数出回っています。また「簡単ですぐにできる」「お金もかからない」といった印象をいだかせる情報も溢れています。しかし、こういった修理に関する責任は全て自身で負うことになります。あまり鵜呑みにしないほうがよさそうです。

<参考サイト>
やってはいけない スマホの取扱いについて│dアプリ&レビュー
https://apprev.smt.docomo.ne.jp/news/news-1447907/
自分でiPhoneの修理を行うのは危険!最も良い修理方法は業者依頼│スマホステーション
https://sma-sta.com/blogs/11800/
自分でバッテリー交換したスマホが発火!~バッテリー交換は正規販売店に相談しましょう~│東京くらしWEB
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/sodan/kinkyu/20230125.html
やってはいけない スマホの取扱いについて|au
https://www.au.com/lp/ts202301/
安さの裏に潜む非純正バッテリーの危険性~発火の事故多発!~|nite
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2021fy/prs220330_01.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性

ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
3

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
4

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
5

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授